#72. 倉 side ページ22
朝起きると頭上に袋が置いてあった。角が袋から突出しており、なんだと思い恐る恐る袋を開ける。
中には箱。新手のマトリョーシカか？なんて眉をひそめ箱を取りだし蓋を開けると、中には新品の靴が。
シンプルで、サイズは俺にピッタリ。丁度いい重さでめちゃくちゃ履きやすい。
『ふあ…、』
沢村から話を聞いたあと、驚きで少しの沈黙が流れた。なんで俺らよりクリスマスの仕様を守ってんだよ、なんて思いながら朝飯を食べ、部室でユニフォームに着替えて外に出た
いつもの柱で、俺の渡したパーカーを着たAが大きな欠伸をしている。
グラウンドにはまだ誰もいない。寒い日にこんな早く部活を見に来るなんて明日は槍でも降るのかと。
「A」
『おー、おはよ』
「靴、ありがとな」
『…はて。』
「はて、じゃねーよ。お前が頼んだんだろ、沢村に」
『なんで知ってんだよ』
腕を組み、白い息を吐きながら1度はとぼけたA。こっちは全部知ってる為すぐに切り捨て話を続けた。
俺が知っていると分かったAは眉をひそめ、不思議そうにしている。
「沢村絞めたら白状した」
『お前最低だな』
「途中まで言いかけてんのにそこで話やめる奴が悪い」
『暴論』
はは、と笑いながら少しだけ恥ずかしそうにしたA。寒さと恥ずかしさとで耳を真っ赤にさせ俺から視線を逸らす。
そんな姿も好きだし、毎日再認識させてくれるこいつは凄い。
「Aはえーじゃん、グローブありがとな」
『…は、お前も、』
「粋な計らいも高校生相手じゃすぐバレんだよ」
『やめろよ恥ずかしい』
「でも嬉しかったのに変わりないぜ」
『…どうだった？サイズは』
俺の肩に腕を置き体重をかける御幸。ニコニコと嬉しそうな顔をしながら手に持っているバッティンググローブを見せてきた。
黒色のしっかりした物。なんで野球の事をほぼ知らないAが知ってるんだと不思議に思ったが、今はどうだっていい。
「丁度。ズレないし気に入った」
『なら良かった』
「俺の靴もサイズピッタリだったぜ、歩きやすい」
『はは、そりゃ良かった。沢村に調べさせた甲斐があったよ』
「どこまで沢村が絡んでるんだよ、」
楽しそうに笑ったA。ワッと頭を撫でて俺らはグラウンドへと足を踏み入れた。あの靴、また3人で出かける時にでも履いていこう。そんな予定は無いけれど、今からその時が来るのを楽しみに待っていよう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
