#53. 御 side ページ3
少し客足落ちたか、と倉持と話していると5人程度の大学生らしい男が興味を持ったらしく、Aに案内されて室内へ
俺らは亮さんに懇々と怒られたばかり。過保護な割には変な所が不用心、甘い。
確かになぁ、と反省しかなり神経すり減らしながらAを見守っているつもりだ。
正直、この学祭での女装もやってほしくなかった。変な奴らが来たらどうする、大体そんな格好俺以外に見せて欲しくない。
「あ、亮さん」
「ちょっと時間空いたから来たけど…特殊な店やってるね」
「満場一致しちゃって」
「瀬乃は？」
『中で接客してます』
3人で中を覗くとさっきの大学生と楽しそうに笑いながら注文を聞いており、まぁ大丈夫かと感じた。
亮さんはそれを見て顎に手を当て「んー…」と小さく呟く。何か気になる事でもあったんだろうか。
「なんで瀬乃があの格好？」
「周りから半強制的にっすね。嫌がってましたよ」
「そうなんだ、あとあんなに喋る奴だっけ？」
「いや、人慣れしたんじゃないですかね、クラスメイトとも話すようになりましたし」
問いに対しての俺らの返答に小さく反応を示し、「まぁ、」と俺らの方に向き直った。
そしてAの方を指さしながら、「やらかさない事だけ祈ってるよ」と。そのまま階段の方へ向かい、降りていった。多分弟の所へ行ったんだろう
でもまぁ亮さんの言う通り、やらかしだけはしないでほしい。
ひんやりとした廊下で壁にもたれながら呼びかけていると、軽く会釈をしながら興味を持って中に入ってくれる人が数人いる。
その殆どが女性。ハイタッチを求める人もおり、テンションの高い彼女達と何度もタッチしているとジンジンして痒くなってきていた。
倉持交代、と俺が看板を持ち倉持が呼びかけ。
少し気になり、室内を見ると料理が運ばれた大学生のテーブル横に…いや、大学生の横に立って談笑している様子。
『はは、俺らのクラス変わってるんすよ』
「でも変わってくれてるおかげで、こんな良いお店に入れたんだからラッキーだよ」
『本当ですか？いやー、お世辞でも嬉しいです』
どこかに引っかかっているのか、スカートの裾が少し捲れている気がする…が、ロングだし気にする程でもないか。
「あの、名前ってなんて言うんですか…？」
「俺ですか？」
「はい…！」
「御幸です、こっち側は倉持って言います」
「わ、野球部の子だ…良かったら連絡先って交換出来たり…」
意外と有名人なのかね、俺たちは。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
