【 ◇のA 】捕手と遊撃手と帰宅部と。 Ⅱ【男主】 (ページ19)

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#69. ページ19

「なんか沢村がプレゼント貰ってたんだけど」

部活終わり、文句を垂れながら2人が教室に入ってきた。早々にバレたか、沢村には少し悪い事をしたと反省

『おかえり』

「おー、A」

「相変わらず寒がりだよな」

「それじゃ」と2人が入ってきた時点でクラスメイトはどこか別の場所へと向かってしまい、すぐに御幸と倉持が俺に近付いてくる。
席が近くだから当たり前ではあるが。

そして日課、挨拶となってしまった口付は相変わらずで髪や額に欠かさずやっている。
俺ももう慣れてしまい適当に受け流している状態だ。

「御幸！」

「ん？」

廊下から聞こえてきた女子の声。
3人して振り返ると手招きをしており、俺らを背に御幸は女子の元へ向かってしまった。「絶対なんかあるわ」と倉持と話していると、少しして手に何かを提げ戻ってきた。

『モテモテじゃーん』

「ちげーよ、なんかクリスマスだから貰っただけ」

「俺らは貰えねーのによ」

『ほんとだよなぁ、酷い話だぜ』

紙袋から取り出したのはマフラーだった。青く綺麗な色をしている。危ない、被らなくて良かった。そう胸を撫で下ろしていると次は同じクラスの女子から倉持が呼ばれた。

振り返って何か話している、クリスマスはこんなに人とのやり取りが多いイベントだったか。

「なんか貰った」

「文句言ってる割には貰うよな」

『何入ってた？』

その問いかけに倉持が取り出したのはスポーツタオル。ホッとしたと同時に、2人は意外とモテていることを再認識した。

すぐに紙袋に戻し、机の横にかけた後2人して顔を見合せカバンの中をゴソゴソと漁っている。

なんだと思いじっと眺めていると綺麗に梱包された物が2つ。

『え、貰ったの見せつけられてる？』

「ちげーよ、これお前の」

「お前欲しがってたろ」

驚き、2人の顔を交互に見た後受け取った物を開封する。
御幸からは充電器と防寒インナー、倉持からは筆箱と裏起毛のパーカー。

『…すげぇ』

「クリスマスだったし丁度いいかなって。」

「ヒャハ、これで満足だろ？」

『…こんなインナーとか服とかも…』

兄貴以外に何かを貰うってこんな嬉しいんだと思い、つい笑みがこぼれてしまう。
何とか捻り出した筆箱と充電器も中に入っており、おまけのようにパーカーとインナーが。
しっかりサイズもあっているし2人は俺の事をよく分かってくれているんだろう、俺のプレゼントだけじゃ足りないかも、なんて思ったが…大丈夫だろうか。