#65. ページ15
『兄貴』
「ん？どうした？」
『俺買いたいもんあるからさ、連れてってよ』
「いいけど…珍しいじゃん。いつもは1人で行くのに」
『兄貴、高校の頃野球してたじゃん。ちょっと一緒に選んで欲しくて』
その日、帰宅するとリビングのソファに腰をかけていた兄貴にお願いをした
すぐに承諾してくれて、今週末にでもと2人で約束。
俺は勝手に何かする事が好き、迷惑はかけないし損はさせない。こっちも小遣いや、去年のバイト代が有り余っているから懐には余裕がある。
「何欲しいの？」
『グローブ。あと普段履きの靴』
「Aの？」
『御幸と倉持。クリスマスだから』
「あー、だからか」
はは、と笑い納得した兄貴。俺の頭を撫でて晩飯の用意をしながら「もうすぐだからなぁ」と呟いている。
その場で制服を脱ぎ、部屋着に着替えて兄貴の隣に並ぶと温かい味噌汁を2つ手渡された。テーブルに持っていけと言うことだろう
コト、と小さい音を立てテーブルに並べる。ついでに箸も置いて兄貴を待つ。
レンジから取り出したのは秋刀魚、少し季節外れだが美味しいからオールオッケー。
2人向かい合わせに座り、手を合わせて食べ始めた。
「Aは2人の事やっぱり大好きだよな」
『うん』
「友達出来た事が奇跡みたい」
『俺もそう思う』
「喜んでくれるといいな」
『だなぁ…、でも気持ち悪くない？クリスマスに同性から靴やらグローブやら貰って…』
味噌汁を啜る兄貴に、不安になってそう問いかけると少し考えた後にニッと元気な笑顔を見せた。
「友達から貰うもんはなんでも嬉しい」と。そういうもんなのか、嫌がられないのか、と少し安心しながらも全ての不安は拭えない。
ものの数分で食べ終わり、食器をシンクへと置く。「早いな」と兄貴は驚きながらも俺に続き食器を持ってきた。
『俺が洗うわ』
「いいの？疲れてない？」
『仕事してる兄貴の方が疲れてるでしょ』
「いい子…」
冬場では地獄のような水。そんな水を出しながら2人分の食器を洗っていく。
その間兄貴は帰宅時と同様ソファに腰をかけ、テレビを眺めている。流れている番組は兄貴の好きなバラエティ。
偶にはゆっくりしてもらうのも有りか。
食器を洗い終えると風呂に促され、そのまま俺は部屋へと戻る。
机に置いたスマホ、その画面が光っていた。
〈シャーペン以外で何か2つ欲しいの無い？〉
と、御幸から。
ゴロンとベッドに横になり、メール画面を眺めながらかなりの時間考えていた。
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
