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「聖也さんご飯行こう、ご飯。」

「俺もそのつもりで待ってた。」

荷物を引き摺らんばかりに地面へ置いて、かろうじて肩掛け紐を握っている。
まるで園児のようにだらしなくなった八重田に、木浪はずっと1人でくつくつと笑っている。

場所を決めると、各々の車に乗り込み、ナビを登録して決めた飲食店へと向かった。
暑いと言うのに、向かった先は焼肉店。中に入れば、席に通されてコースを選択する。

お互いお酒は頼まず、烏龍茶で乾杯をした。

肉の焼ける音は何故こうも食欲を煽るのだろう。
よく食べる後輩の八重田が可愛いのか、木浪はもっと食えと言わんばかりに焼けた肉を皿に乗せていく。

入店してどれほど経っただろう。
空腹が落ち着き、2人の食べるペースが少し落ちた。

「今日はずーっと浮かない顔してたね。」

突然の木浪の言葉に、烏龍茶を飲んでいた八重田の視線は彼を向く。

「なんかあった?先輩が聞いてあげようか。」

優しく微笑む彼に、少し考えてグラスを置いて「いやあ。」と苦笑いを浮かべて話を始めた。

「チカちゃんの事なんですけどね。」

「そーだろうね。」

案の定といった言葉に、八重田は照れ臭そうに笑う。
賑やかな店内は様々な人生が流れ、良い事も悪い事も消化されていく。
悩みの吐き出し口には丁度いい。皆、誰も一個人の八重田と木浪の事なんか見向きもしていない。

「…嫌われてんねやろなぁって、ほんまに、昔から分かってて。でもね、やっぱり先輩後輩やし、幼馴染でもあるから、仲良くしたいんですよ。」

目の前の木浪は頬杖をついて、ゴチャついたテーブルの上の物を避け、突っ伏してしまった八重田を見つめている。

「なんでも出来るし、チカちゃんよりも上ってあの人は言うんですけど全然、そんな事も無くて。」

「サロンでさ、おまじないがどうこうとか、言ってなかった?」

心落ち着く彼の声に視線を動かし、今日一日の記憶を遡る。
選手サロンで、と数秒考えて「あ、おまじない。」と体を起こした。
少しくせっ毛な八重田の黒髪は、テーブルに突っ伏していたせいで変な方向へと跳ねてしまっていた。

「おまじない。チカちゃんと、両想いになれへんかなぁって。プリンの真ん中食べて、カラメルを周りに掛けて食べ切るってのやってみたり。」

「なにそれ、マニアックな。」

「ほんまに、今思うと何やってんねやろって感じなんですけどね。」

笑顔が崩れない八重田は、うっすらと瞳を開けると「あの時は本気で。」と寂しく呟いた。

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まるもち(プロフ) - 全部がそうってわけではないんですが、勝手に終/日/柄さんの春/が/降/るをイメージしながら読んでいました。儚くて哀しくてでも綺麗な感じが出ていてすごく好きです!! (4月5日 3時) (レス) id: a59d46543d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年1月19日 22時

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