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「あ、八重田選手いたいた。」

男性のその言葉に振り返る。
翌日、練習終わりにバットを2本手にし、グラブを頭に乗せていた八重田は振り返り、足を止めた。
目の前の彼は広報だ。カメラを向け、駆け寄って来る。

「八重田選手の密着しようかと思って。」

「練習終わったっすよ。」

「じゃあ、明日から。」

「んふふ、そんな予約の取り付け方ありますか。もー、ええけど。」

空いている左手で頭のグラブを押さえながら、照れ臭そうに笑う。
10年プロの世界にいながら、カメラにはまだ慣れていないようだ。辺りを見渡し、他に選手が居ないかを探し出す八重田をカメラは追い掛ける。

「あ、京己発見。」

「Aさん。カメラまで引き連れて。」

「広報は京己の密着とかしないんすか?」

「後々に。」

背の高い湯浅の腰に手を回しながら広報へ提案をするが、曖昧に笑ってのらりくらりと躱されてしまう。
湯浅は自身よりも多少背の低い八重田の肩に腕を回しながら、体重を預けている。八重田の頭上のグラブへと頬を寄せながら一緒にカメラに映る湯浅は、先輩相手にも関わらず心を許しているようだ。

「2人、結構年齢離れてるけど仲が良いよね。」

なんて、広報の言葉に2人は顔を見合せてキョトンとした表情を浮かべた後、パッと笑顔が咲く。

「仲良いけど、やっぱチカさんには負けます。」

「俺チカちゃん大好きやもん。」

悔しそうにしながらも笑っている湯浅へ手を伸ばし、彼の頭を強く撫でた後、道具を置きに行く為に彼から離れた。
明日から、と言ったはずなのだが、広報のカメラはまだ八重田の背中を追い掛けている。

「着替えるまで待っててくださいよ。」

そう言った八重田は、ロッカールームの中に入り、廊下に広報を1人待たせていた。
道具を置き、泥だらけになった練習着を脱いで私服へと着替えを済ませる。

「なんでそんな急いでんの。」

同じくロッカールームに居た大山がせかせかと荷物をまとめている八重田へ問い掛けた。

「人待たせてるんで。」

「彼女?」

「んなわけ!広報!」

女の影を期待した大山は、広報と言う言葉を聞いて「期待したのに。」なんて落胆しながら呆れたように言う。
「女じゃなくてすみませんね。」と口を尖らせながら言えば、荷物を肩にかけて彼に片手を上げ、ロッカールームを後にする。

着いてこれるギリギリまでカメラは来るのだろう。
カメラに映る八重田は、柔らかく笑って人の良さを溢れさせる。

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まるもち(プロフ) - 全部がそうってわけではないんですが、勝手に終/日/柄さんの春/が/降/るをイメージしながら読んでいました。儚くて哀しくてでも綺麗な感じが出ていてすごく好きです!! (4月5日 3時) (レス) id: a59d46543d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年1月19日 22時

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