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MLBのスカウトの目の前でノーヒットノーランを成し遂げた6月。
月野木の評判は上がり、まだシーズンの中盤だというのにスカウト達での争奪戦なんて言われる程になっていた。

ただ楽しく、好きに野球をしているだけで自身の争奪戦が行われている事に月野木は嬉しく思いながらも苦笑いを浮かべる。

月日はすぐに流れていき、終盤戦に突入したがチームの連携は取れたものの、2年連続優勝には至らずオフシーズンを迎えてしまった。
日本シリーズも終わり、月野木はぐったりとした様子で隣に腰掛ける人物の体に寄り掛かる。

「…落ち込むなぁ。」

端正な顔立ちも、彼の腕に押し付けて片目が潰れてしまっている。
そんな月野木の顔を覗き込みながら前髪を掻きあげる様に指を通し、優しく撫でた。

「……なんか、ダメな気がする。」

「なんが?」

彼の手に目を細めながら、小さな声で返事をする。

「明日監督に呼び出されてて、行くんですけど…なんか…。」

「…あー。大丈夫やろ。お前の成績ならいけるって。」

牧原の慰める様な言葉に、彼を見上げる。
月野木の自宅に遊びに来ていた彼は、沈み込むソファの居心地がいいのか立ち上がる回数も少なく、寄り掛かったままの月野木を撫で続けていた。

彼の優しい手にウトウトし始めた月野木を見ては、ふっと息を吐くように小さく笑って目にかかる前髪を指先で避けてやる。
いつの間にか眠りについた月野木の頬を、骨張った手の甲でそっと撫でては不憫な彼に同情する。

「…来年…、いや、メジャー挑戦は再来年やろなぁ。」

なんて、不安げに、寂しげに眠ってしまった月野木を見つめて呟いた。


「ッは…、はぁっ?!」

肌寒い季節、着込んでやってきた月野木は暖かい室内で少し汗ばんだ。
上着を脱いで腕に掛け、静かな監督室に月野木の大きな声が反響した。監督は顔色ひとつ変えることなく、月野木をじっと見つめていた。
廊下の賑やかな声も、月野木の声で一瞬静まり返ったように思える。

「去年はっ、活躍次第でって…。絶対前よりも良くなってるはずです、なのになんで!」

「千賀もメッツに行くし、投手が減る。月野木まで行ってしまったら立て直す事も困難になる。」

「でも、でも若手は沢山いる訳で…!」

「…。千賀が居なくなった今、月野木はエースとして試合を作る事になると俺は思っている。お前に期待をしてるんだ。」

冷たい汗が頬を伝い、顎から床へと落ちていく。月野木の呼吸音は少し荒れていて、動揺が隠せないでいた。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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