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オリックス戦、月野木は順調にプレーしていた。
野手投げだからか思った通りに腕や体が動いてくれて、外野手としての役目をしっかり果たしていた。

「えらいね。」

自球団の投手交代の際、センターの周東の元へ向かうと彼は頭を撫でてくれた。
マウンドを見れない月野木を落ち着かせようとしたのだろう。

全てを分かっているかのような彼の言葉に頷き、ダグアウトから投手が出てきた事を確認すると月野木は立ち上がって守備位置に戻って行く。
頼もしい背中、自身の時もこんな風に見られていたのかと思うと嬉しくて、未練が強く残っている事を認識させる。

攻撃の回、相手球団も投手を交代した。アナウンスが響いて出てきたのは山崎だった。
ネクストで素振りをし、スプレーを吹きかけて準備を終えていた月野木は片足に体重を預けながら彼の事を見ていた。
長身で、あげる足は付け根から足先まで綺麗で。マウンドで投げている彼に嫉妬心が生まれる。

打席へと向かおうとした際、監督に引き留められて足を止めた。
なんだと思い足を止め、背の高い彼に耳を貸す。

「ここで爪痕残さないと今シーズン限りで契約終わりかな。」

脅しにも程がある。
彼の言葉に胸が締め付けられながら、マウンド上の山崎の姿を見つめて下唇を噛む。
不安に満ちた瞳を浮かべる月野木の姿を、ダグアウト内からじっと見つめる。

可哀想になるくらい責任を押し付けられる。
可哀想な位が月野木は可愛く、愛らしい。

不安や恐怖に満ちたその表情は周東の好みに刺さるには容易だった。

不意にマウンド上に居た山崎は、先頭打者である月野木へ視線を向けた。
真っ直ぐと山崎を見る彼に、思わず笑ってしまう。何故そんなに見てくるのかと。

「返事は。」

耳元での低い声。
震える手を必死に抑えながら、山崎からふっと視線を外して

「……はい。」

と応援の声に呑まれる程の小さな声で返事をした。
野手月野木になれるチャンス、開幕してすぐに投手月野木と同じ道を辿る事になると本人は悟る。どうしても、首を横に振ることが出来ない。

重い足取りで打席を向かう中、月野木の心情なんか知らずに球団ファンは大きな拍手と応援歌で迎えてくれる。
投手だった自分が気に入らなかったんだ、とそんな卑屈な考えを持ちながら初めて同級生が投げる打席へと立った。


開幕早々全てが決まる打席。
来年はもう無いんだと絶望しながら俯いて、悔しさを滲ませて歩く。

本当に都合のいい男で球団の操り人形だ。


───
END

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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