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バックネットに硬球の衝撃が吸収される。
強く靡き、そのまま球は地面へ落ちる。

「フォーム変えてみる?」

甲斐は球を拾って月野木に問いかけた。
汗を拭って呼吸を整える月野木は、投げる事もしんどそうにしており見るのもつらい。

「…出来るなら、変えたいです。」

「うん、心機一転でいいと思う。足の上げ方とか、ちょっと変えるだけで投げやすくなるかもしれんしね。」

投手コーチにフォームを確認して貰いながら、甲斐が構えるミットに向かって投げる。
相変わらず腕にブレーキが掛かり、地面へと叩き付けたり力無い投球をしてしまう。
背後で聞こえる快音に余計憂鬱が月野木を取り囲むように伸し掛る。

「…バッティングがしたいです。」

「んふふ、野球はしよきたいったい。1つ空いとるし、行ってきたら?気分転換で。」

甲斐に背中を押され、彼にグラブを渡し、彼のバットを借りてコーチを呼ぶ。自身の方も投げてくれと手招きをしてお願いをしてみると、案外すんなり頷いてくれて月野木の表情にほんの少し笑みが浮かぶ。

「投げるよー。」

その言葉が掛けられ、ネットの向こうから投げられる球を捉え、レフト方向へと飛ばしていく。その打球を追い掛けるのは谷川原だ。

打撃フォームも完成しているようで、振り抜く姿も整い打撃センスは目を惹く。
打撃練習を終えた周東は、微笑ましく見守る甲斐の隣に並んで月野木を見つめた。
投球障害を発症した現在、打撃練習をする時が1番楽しそうで、笑顔も見ることが出来る様な気がしていた。

「やっぱ打つのって楽しいですね、スッキリする。」

「結構飛ばすやん。」

「打撃センスすげー。悠々と…。」

10球中その半分の5球はスタンドへと入り、高くバウンドしていた。
打席から出て、甲斐からグラブを受け取りバットを返却する際、2人に褒められて月野木は目尻にシワを寄せ、幸せそうにはにかむ。
数年前の楽しそうに野球をしていた頃の月野木が戻って来たようで、2人の顔にも笑みが浮かんだ。

「なんか、久しぶりに褒められた。ふふ、嬉しい。」

「本当は野手やったもんね。」

「そうなんですよ、高校の頃に投手転向したんですけど…やっぱ打席が楽しくて。」

投げる際よりも、嬉々として話す月野木の頭を周東が撫でる。
優しく労うような手に、片目を瞑ったかと思えば人肌を求める様に擦り寄った。
人懐っこい猫のようで、大きな瞳を細めるその姿は愛らしく儚げだった。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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