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街路樹も緑の葉は落ちて細い枝がよく目立つ。
車から1歩外に出ると冷たい風が身に纏い、寒さを凌ぎながらドームの中へと入っていった。肌が乾燥して頬は赤くなり、暖を取る為手を擦りながら監督室へと向かった。

暖かい室内は居心地が好くて、着込んでいた上着を脱いだ。
ぴょこんと着いた寝癖は歩く度に揺れて、まるで意志を持っているかのようだった。

「月野木は、メジャー挑戦どうしたい?」

「いけるなら、僕は挑戦してみたいです。」

「……でも、イップス発症したしなあ。」

目の前で考える監督に、月野木の表情は少し歪む。
何度投げようとしても思ったように腕が動かず、変な癖がついて暴投してしまう。それが引っかかるのだろう。

「…千賀さんが抜けて僕までも出て行ったら大きな穴が出来るって言われました。」

「…。」

「エースになれるとも囃し立てられ。でも、そんな称号貰ったこともない。
あと何年、僕は上げて落とされてを繰り返したらいいんでしょうか。あとどれくらい、操り人形にされるんでしょうか。」

月野木は長いまつ毛を揺らして目を伏せ、自身のシャツの裾をぎゅうっと握りながら呟く。

「来年、Aはグレードアップすると思う。」

監督の言葉に頭を抱える。
彼の言葉が頭の中で何度も繰り返されて、うんざりしてしまう。

「……そうですか。」

「お前なら大丈夫。治るよ、きっと。」

「…メジャーとか、投球障害だとか、もうどうでもいいです。」

月野木の冷たい言葉は暖かい室内に響いて消えた。
一瞬流れる静寂に、彼は頷きながら「本当にごめんな。」と謝罪をする。
小さく頭を下げてロッカールームへと向かう。蛍光灯が嫌という程月野木を照らして、元気を出せと励ましている様で余計苛立ちが募った。

ロッカールームに入れば、甲斐が丁度練習着に着替え終わったところで「おお。」と彼は驚いた声を上げる。

「……拓さん。」

「今日がこっちでの練習は最後やったっけ。次から筑後でなんやろ?」

「そう、っすね。リハビリ組で。」

「…好きなだけ受けちゃるよ。落ち着いてからでいいけん、グラウンド来てよ。」

毎回投球を受けてくれていた信頼の出来る手の平で髪をくしゃくしゃと撫でる。
優しさに満ちたその手に涙が出そうになりながらも頷き、小さく返事をした。
パタンと閉じた扉の音と共に、空調の音が大きくなったような気がする。

暖かく、綺麗で静かなこの場所に縋りながら、練習着に着替えて自身の荷物を片付け始めた。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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