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楽しい時間はあっという間だ。大好きな野球はもう7年目に突入している。
中学1年生だな、なんて思いながら開幕したシーズン。

WBCでは大谷やダルビッシュ、山本に佐々木に宮城にと目の惹く選手ばかりで月野木はそれほど目立つ事は無かった。
大々的に取り上げられるのはやはり大谷で、テレビを付ければどこかしこもアメリカ戦の最終回を流し続ける。

それに続いて村上のタイムリーや、周東の走塁等も皆の印象に残っていた。
そのせいか、日頃から誹謗中傷の多かった月野木のSNSアカウントには、WBCの不活躍ぶりを叩くコメントが目立った。
選ばれた意味を問うコメントばかりで、数回スクロールした後現実逃避をする為に画面を暗くさせる。

そして、目の前のマウンドでは有原が登板していた。
山本との投げ合いは自分がローテーションで回ってくる予定なのに、それを組み替えられてしまった。

羨ましいという思いが強く心に根付いた。

ダイヤモンドだとか、エースだとか。
数年間、山本との投げ合いで活躍してきた月野木には与えられなかった言葉が彼に付与される。
なんの意味も成さないベンチ入り、ブルペンから悔しさを滲ませて目の前の試合を見つめていた。

「周囲から見たら…監督から見たら、僕は何なんでしょうか。」

鳴り物が響き、野手が打つ度にどよめき歓声が上がるドーム内のブルペンで、月野木は消え入る声で呟く。
隣には相変わらず甲斐野が居て、水の入った紙コップを手渡す。

「守護神的な?」

「そんなはずない。」

「うーん。頼りになる…先発投手。」

「…こう言っちゃなんですけど、僕、かなり面倒で執着心が強い性格をしてると思うんです。」

彼から受け取った紙コップに口を着け、水を一気に流し込む。
冷えた水は月野木の喉を潤して、口角から顎に向かって重力に従い伝う。

「まぁ、執着はすごいよな。野球に関しては。」

「…なんの為に今、こうしてここに居るのか、何も見い出せて居なくて。」

三者凡退で抑えた有原をじっと見つめながら、寂しげな声色で呟く。

「………ホークス、好きなのに。」

甲斐野の方を一切向かない月野木は、涙を隠しているようにも見えた。
そんな彼の背中をじっと見つめながら、先輩として何もしてやれない不甲斐なさを感じ、背中に手を置く事も躊躇う。

「…僕も、" 月野木なら安心 " って、7年間のうちに少しでも言ってもらいたかった。」

いつの間にか攻撃の回になっていたグラウンドを、2人で黙って見つめた。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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