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山本と山崎の元へ向かっていた月野木だが、1人寂しく座っていた宇田川が目に付いて進行方向を切り替えた。
背後から2人の声が聞こえるが、無視をして宇田川の目の前にしゃがんで目線を合わせる。

「うだ!」

「A。」

「んふふ、はーなぁそ。」

目を細め、心底楽しそうにそういうと宇田川の隣に腰掛けた。
やはり、誰にでも話しかけに行く。コミュ力がずば抜けて高いと言うわけでもない月野木だが、愛嬌と性格で全て補えているように思える。宇田川は、そんな彼が羨ましく思えて仕方が無い様だ。

笑顔で話を聞き、相槌を打ちながら聞き手に回る月野木に宇田川も止まらず話す。
寒いはずの外気に晒されながらも、何故かほんのりと温かみを覚えて宇田川の表情も柔らかくなる。
2人きりで少しの間話していると、足音が目の前で止まり2人で見上げた。

「宇田川くんと、月野木くん。」

指をさして、確認するように名前を呼ぶ。
優しい声と整った顔にも驚いたが、ダルビッシュ有が目の前にいるという衝撃が強かった。
代表で選ばれていた事は当たり前だが知っていた。それでも、大先輩で憧れの人物が名前を呼んで、優しく笑って、声を掛けてくれた事実が嬉しかった。

「ごめんね、2人きりの邪魔して。仲良くなりたくて。」

彼もまたしゃがみこんで視線を合わせる。宇田川を見て、月野木を見て。まるで幼稚園の子供を相手にする様な彼の対応に、2人も狼狽えながらも返事をしてダルビッシュを真ん中に呼び、3人並んで会話を始める。

「俺、Aくんがメジャー挑戦するの楽しみにしてたんやけどなあ。」

不意に振り返ったかと思えば、彼は口角を上げてそう言った。
手を伸ばして、大きな憧れでしかない手のひらで月野木の冷たい頬を覆うように撫でる。
優しい手つきで、形を確かめるような。

「あ…。はは。僕も、メジャー挑戦やってみたかったです。」

「やったら良かったのに。」

「……僕はそのつもりでした。でも、抜ける穴が大きすぎるって。また、来年に期待です。」

強引に笑った笑顔は、ダルビッシュも宇田川も引っかかるものがあった。
ダルビッシュが追加で質問をしようとした時、遠くから「つーきぃのーきぃ!」と山本の大きな声がして、月野木は思わず吹き出すように笑う。

「すみません、由伸がうるさいんでちょっと行ってきます。
うだ!ダルさんと仲良くなるんだよ!」

そう言うと、すぐさま立ち上がり2人から離れて行く。
この時ばかりは執拗く名前を呼ぶ彼に感謝した。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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