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山本にも慰められ、少し気持ちを持ち直した所で掛かってきた電話に月野木の胸は高鳴っていた。
まだまだ寒い2月、パーカーやネックウォーマーを付けて寒気から逃れようとする。
白い息を吐き、ネックウォーマーから飛び出た耳や鼻は照れているのかと言わんばかりに真っ赤に染まっていた。
「さむぅい!!」
日本代表に選ばれた選手が集まる宮崎キャンプ。
ポケットに手を入れ、小さく跳ねながら思わず大きな声を上げる。
「ほんと寒さに弱いなあ。」
月野木の隣に立っていた甲斐は飛び跳ねる同じ位の背丈の彼を見つめ、目を細めて楽しげに笑う。
「拓さん寒い。本当に寒い、この時期本当に嫌いです。」
肩を上げ、身を縮める月野木は甲斐の肩に顔を埋めて身を寄せる。
スキンシップが多く、先輩でも後輩でも分け隔てなく寄っていく。今回もそうだ。
顔を埋める月野木はこの時期になると珍しく無いのか、甲斐も慣れた様に肩甲骨の浮き出た背中に手を回して、あやす様にトン、トン、と優しく叩いている。
「俺も寒いです、寒い!」
そんな声がしたかと思えば、月野木の背後から甲斐に向かって腕を回す。
そして丸くなった背中に頬を当てて「あったかーい。」なんて、周東は目を閉じた。ホークスの選手が仲良さげに3人固まるその光景に、他球団の選手も苦笑いを浮べた。
「佑京は慣れとろうもん。」
「いや、寒さは頑張っても慣れないっすよ。」
月野木を覆い隠す2人は彼の頭上でそんな会話を交わす。
次第に体は暖まってきたのか、甲斐の肩に顎を乗せた月野木は
「暖かいと眠くなるからだめですね。」
なんて呑気に発言した。
冷たく刺さるような風に揺れる月野木の髪をじっと見つめた周東は、顔を近付けてそのまま彼の頭に口を寄せる。
月野木は何かが触れたとは感じたが、それが何かも認識出来ておらず、苦言を呈することも無かった。
けれど、目の前の甲斐はバッチリ目にしており周東の頭をコツンと軽く小突く。
「A。向こうで呼んでる。」
ふと目に付いた山本や山崎を見ていると目が合い、お互い小さく頭を下げる。
月野木を貸してくれと言わんばかりに手を合わせる2人に、甲斐は仕方無く月野木の肩を叩いた。
「あ、じゃあ行ってきます。また。」
あれだけくっ付いていたというのに、するりと腕の中から抜け出す月野木に寂しさも覚えてしまう。
「小突くなんて酷いっすよ。」
「人前では控えろって言いよっと。」
そんな2人の会話も北風の音に掻き消されてしまった。
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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2023年11月9日 22時