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月野木が負ける時は毎回「可哀想。」だなんて声が上がる。
先発投手として好投しても、継投でマウンドを降りた回から点が取られ始める。
どんなに無失点で抑えても、安打数0で託しても、まるでそれまでの屈辱を晴らすかのように相手球団は攻撃を仕掛けてくる。

けれど、継投を務める投手が点を取られても、月野木は試合経過を楽しそうに見つめていた。
攻撃の回は鳴り響く鳴り物と共にリズムを取り、選手それぞれの応援歌を口ずさむ。
守備の回、継投投手が打たれれば笑いながら見守るよう見つめ、抑える事が出来れば誰よりも早くダグアウトを出て戻って来る選手を迎える。

そんな月野木はよくカメラに抜かれていた。

" 畜野木(ちくのき) " なんて文字られ、時折ネットでネタ化する。
そんな事、SNSをほぼ見もしない月野木は知らないままだった。

「よしー。」

翌日の昼間。スタンドからも練習見学に来ていた客の声が賑やかに響く。
そんな中で、月野木は相手球団のダグアウトへ向かい、1人の投手に声をかけた。

「お、A!」

「由伸う〜、会いたかったあ。」

「昨日普通に試合したやん。」

山崎や山岡と会話をしていた山本は、寄って来た月野木を受け入れた。
同期入団の中に、球団は違えどまたも同期が増えて山崎と山岡も嬉しそうだ。

ダグアウト前に4人対角線上に腰掛けて輪を作る。
胡座をかいたり、足を伸ばしたりと自由に座る4人は性格が出て面白い。

会話に盛り上がっては天を仰ぎながら笑って、やいやいと楽しげに上擦った声で会話を続ける。
チーム内で見せる笑顔を、他球団の中でも分け隔てなく見せては仲を深めていく。

「月野木呑気に笑ってんなよテメェ!!!」

そんな4人を眺める客も、本人達も和やかな雰囲気に包まれていた時、男の怒声が響いた。
離れた場所だったが、彼の大きな声は笑い声に消されること無く月野木の耳に届く。
はたりと笑顔が消え、思わず4人ともバックネット側のスタンドへ視線を向ける。

「初めて練習で怒られたんやけど。」

一瞬静まり返った空気を和ませる為か、月野木はまた安心する様な笑みを浮かべて自虐する。
その切り替えの速さに3人は驚いた表情を浮かべていたが、つられて笑って彼へ手を伸ばし寝癖のついた髪を3つの手で強く撫でる。

「笑って怒られてるんおもろ。」

無造作に撫で回される月野木を見て、山本はけたけたと笑いながら言った。

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Hime(プロフ) - 好き、全員が幸せハッピーエンドの作品が見たいです… (11月26日 21時) (レス) @page35 id: 49f8a58ef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年11月9日 22時

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