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監督と相原が必死に頭を下げた為、医師も渋々首を縦に振ってくれた。
放射線治療では無く、飲み薬の抗がん剤治療を主にやっていく。
副作用については自宅で頭が痛くなるほど調べ尽くした為、覚悟も出来ていた。

もう一度大事を取って診察し、向かいの薬局へと行くよう勧められた。
静かな監督とは違い、相原は監督相手にも「"明るくいきましょうよ"」なんて笑顔で一方的にペラペラと壁当ての様な会話を続ける。
薬局では医師に書いてもらった処方箋を渡し、抗がん剤を用意してもらうまで待っていた。

「"大病なのに呑気だな"」

「んは、"僕はこのテンションでずっとやってきましたから。今更暗くなるなんて無理です"」

そう言って笑い、名前を呼ばれるとお金を払って抗がん剤を受け取った。
いざ薬を手にすると、本当に自分は癌なんだと再認識させられる。幸い薬局内には相原に気付いている人もおらず一安心だ。すぐに薬はカバンにしまい、「"…本当に、無理言ってすみません。"」と一言謝罪した。

その日、少し時間をズラして、先に相原が球場へと顔を出した。

「あ、遅いよA。監督が居なくてラッキーだったね」

すぐに相原を見つけた大谷が駆け寄ってきて隣に並ぶ。
170cmの相原の隣に並ぶ190cm超えの男はまるで小動物を狙う大型動物のよう。
そんな2人を眺める水原は、なんとも言えない表情を浮かべていた。相原が今日遅れた理由も知っているから仕方ない。

「翔平はいい日除けになるね」

「なに人を勝手に日除けにしてんの」

「隣に並んだのは君だろぉ」

いつもと変わらない微笑ましい会話。これがあと何回繰り返されるのだろうか。
ステージ4の5年生存率はかなり低い。抗がん剤治療でどれだけ癌が小さくなるかも分からない。ギャンブルのようだ。

「3月の日本は暑いのかな」

「3年前はどうだった?」

「もー地獄!3月なのに5月、6月並の暑さ!」

「どれもこれも温暖化のせいかね」なんて呟く相原を見て大谷は目を細めて笑う。
太陽に照らされて熱を持つ相原の黒髪に指を通して優しく撫でると、「なに必死に頭良さげに見せてんの」と意地悪な事を言う。
ただ、そんな発言よりも撫でられている事が心地よかったのか猫のように目を細めて相原は大人しくしており、大谷もつい黙ってしまった。

髪が抜け始めたら撫でてもらうことはできない。今のうちにと相原は内心撫でられる事を苦と感じていなかった。

「…君は何されても画になるね。」

そんな相原に大谷は小さく呟いた。

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お餅(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました素敵な作品ありがとうございました (6月18日 23時) (レス) @page33 id: 8d7c7e252f (このIDを非表示/違反報告)
ツンデレ殿(プロフ) - 完結お疲れ様です。涙涙で頭が痛くなりました笑とても素敵な作品でした!!本当にお疲れ様でした!! (6月11日 21時) (レス) @page33 id: 62ded70eb4 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどうジュース(プロフ) - 完結お疲れ様です。正直、かなり泣いてしまいました笑笑 前作も読みましたが、凄く面白かったです。素敵な作品を、ありがとうございます。 (6月11日 11時) (レス) id: cf3b69c759 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年6月4日 13時

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