後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ7)

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#7. ページ7

"──大丈夫やで。"と何度も断る諒希と、"──ええから。"と1歩も引かない剛
根負けした諒希は剛にレジ袋を持ってもらうことにした。その代わりとして、剛のスクープカバンを諒希が手に持つ

帰り道が同じの2人、一緒に登下校はしたこと無かった
少し気まずい沈黙が流れた後、先に口を開いたのは諒希だった。

──光一くんって、男に興味無さそうやんな

いきなりのその言葉に"──へ、"と剛は腑抜けた声を漏らす
急になんなんだと。今俺がいるのに光一の話かよと、剛は内心不満ばかり
それでも好きな子の悩みは聞いてあげようと必死に返事を考えた

──剛くん知らん？光一くんの好み

──いや…あんまそんな話せえへんから、

──そっかぁ。…振り向いて貰えるなら女にだってなる覚悟あるんやで、僕

と剛を見て笑った諒希。諒希が女子だったらそれはもう可愛いの域を越えるだろう。ただ、剛は諒希の細い腕を強く掴んで引き止めた
諒希も驚いたように振り返り、剛をその綺麗な瞳で見つめる。ずっと、お互い少しの間何も話さない。生ぬるい風が2人の間を抜ける

──…俺、今のAくんがええ

──いきなり、

──いきなりなんはどっちやねん、俺は絶対今のままのAくんがいい。今のAくんを好きな子がおるかもしれんやん

少し説教じみた剛の言葉
ぽかんとしたまま聞いていた諒希は、丸い瞳を半月型にさせるとその薄い唇の口角を上げた。ちらりと見える犬歯が可愛らしく、子犬のような表情を浮かべる

──そうやといいなぁ。あと、流石に性転換は考えてへんから、安心し

諒希は"──なっ、"ともう一度剛に笑いかける。剛も眉間に皺を寄せてはいたが、渋々頷きまた歩みを進める
角を曲がると住宅街。そこから少し歩いたところに諒希の家があった。剛の家も諒希の家からはそう遠くもなく、通ろうと思えば通れるような場所だ

一軒家の前に来ると
"──ありがとう、重かったやろ。ごめんね"
諒希は剛の手から買い物袋を受け取り、スクールカバンを返す。返事をして帰ろうとする剛を呼び止め、鍵を開けて家の中に戻るとバタバタと大きな足音を立てて、何やら家の中を走り回っている様子
2分もしないで出てきた諒希、手には個包装されたクッキーが3枚

──お礼。助かった、ほんまにありがとう

諒希は剛の手に半ば強引に握らせ微笑んだ
"──あ、りがと"
と驚いた様子の剛だが、嬉しかったのか微笑んで手を振って帰っていく。そんな剛が見えなくなるまで諒希は見送っていた