後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ22)

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#22. ページ22

光一は諒希の変化に気付いていた。
剛とよく話し、よく笑うようになった姿が視界に入るから。

2人が付き合い始めてどれほど経ったか。
いつの間にか諒希の姿を目で追うようになってしまっていた光一は、その日の放課後廊下に出てきた諒希を引き留めた。

"──待って"

と細い諒希の手首を掴むと、びっくりしたように振り返り足を止める諒希。

──どうしたん光一くん

──…最近、好きって、俺に好きって言ってくれへんやん

光一は諒希に言った。
あれが日常だった、諒希に話しかけられないと気が済まなくなっていた。
眉間にシワを寄せ、じっと諒希を見つめる光一。ふわりと冷たい風が抜ける廊下。

──…僕、光一くんの事諦めてん。ああ、無理なんやなって、やっぱり女子が好きなんやろなって分かったから

──……でも、それでも好きって

──もう、ほんまに諦めてん。今まで迷惑やったろうし、ほんまにごめんね

諒希は光一の手を振り解き、苦笑いを浮かべて去っていった。
柔らかい諒希の柔軟剤の香りだけがその場に残る。
呆然と立ち尽くす光一の肩をポンと叩く人物がいた。ふと振り返ると剛が。

じっと諒希の背中を見つめたと思ったら、剛は光一と目を合わせ口角を上げる。

──ふふ、光一が靡かへんからAくんと付き合う事になってん

──は…

──勿論、告白は俺から。ギリギリまで悩んでたで、ほんまにええんかって

──…嘘…

光一の震える声に剛はつい笑みが溢れてしまう。
ポンポンと背中を叩きながら光一を励ますかのように剛は言葉を続ける。

──Aくんに惚れるのが少し遅かっただけやで。残念

そう言うと光一の背中から手を離し、諒希の後を追っていく剛。
1人取り残された光一。

長い教室前の廊下。
夕焼けに染まるこの場所で、光一は今までに無いくらいの後悔をした。
もっと、もっと早く告白していれば。
もっと早くに振り向いていれば。
いつの間にか諒希に好意を抱いていた事に早く気が付いていれば。

後悔してももう遅い。

"──最悪や…"

親友と大好きになってしまった子が付き合っているという事実。
悔しさを滲ませながら、呟いた。
どうにかして剛から諒希を奪ってしまおう。自分のものにしてしまおう。

そんな黒い感情を大きくさせながら、光一は下駄箱へと歩を進めた。

───
END