後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ19)

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#19. ページ19

必死に考えた手紙。
流石に2枚はくどいだろうと、1枚に何とか気持ちを詰めこむ諒希は翌日の放課後、帰宅前の光一に渡した
剛も隣に居た。少し不機嫌そうな剛になんか気付かない諒希と光一は軽く会話を交わした後、手を振って別れた。

──きれーな字

──ちっちゃい頃から習字習ってたんやって

手紙の入った封筒を見ながら光一は呟き、それに対して剛が返事をする。
"──へぇ"と下駄箱で靴を履き、校門まで向かっていた時だった。後ろから"──堂本くん！"と女子が2人、剛と光一を呼び止めた。

不思議に思い振り返ると同時に、腕を掴まれ、体を密着させてくる。
香水のキツい匂いが鼻を掠めた。

──なにそれ？

──手紙

──え、ラブレター？誰から？

──教えへん

手紙を取られないように光一は手を上に伸ばしたり引いたりするが、その攻防虚しく手から水色の封筒を奪い取られてしまった。

"光一くんへ"

と綺麗な字で書かれた封筒。
その封を開け、女子生徒は中の便箋を取り出した。光一はまだ奪い返そうとするがひらりと躱されてしまう。

──ちょぉ！これ諒希からやん！うっわ手紙って

──嘘やん！諒希が光一くんにラブレター書いたん？！あんな振られてんのに？！

女子生徒はギャハハ、と笑いながら手紙を読み上げていく。
時折"──きっつ〜"なんて楽しそうに笑う。
最後まで読み終わると、光一の方を見て

──私達が捨てとくわこれ、光一くんには必要ないし

と目の前で手紙を細かく破り始めた。
もう切れない、というまで小さくなった諒希からの手紙。バッと風が吹く中手を離すと桜の花びらのように舞っていく。

──っ……なにしてんねん！！Aくんの、光一が頼んで書いてもらった手紙何勝手に破ってんねん！！！

目の前で破られていた際は驚きで声も出なかった2人。
最初に声を荒らげたのは剛だった。
それには光一も目を大きくさせ、その圧に口を閉じる。

女子生徒も"──そんな怒らんでも、"と苦笑いをして逃げるように走っていった。
剛は光一の方を見たと同時に、下駄箱付近の人影に気が付いた。

呆然と立ち尽くす諒希だ。

2人とも血の気が引いた。
見ていたのか、見られていたのか？内心焦っていた。

諒希の表情は驚いたというような、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていて、少ししてようやく目が合った。

──………あ、は…はは。

諒希は困ったように眉を下げて笑うと、今にも泣き出しそうな表情になり2人の横を走って過ぎて行った。