後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ18)

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#18. ページ18

──手紙書いて、その内容で俺決めるわ

昼休み、窓から身を乗り出して諒希に話しかける光一。
剛も諒希もぽかんとした表情で光一を見つめた。

──自意識過剰とか思われるかもしれんけどさ、言葉ではもう伝わったから文章でも…なぁ。分かる？

──なんとなくは分かるけど、よぉ自分から持ちかけたな

──そうせな進展せんと思って

──別にええけども…、僕文才無いで

困ったようにはにかんだ諒希。
剛はピクっと眉間に皺を寄せる。やっぱりまだ光一の事が好きなんだ。そして、光一も少しだけ諒希に靡いている。
やばい。やばいやばい。本当に俺を見てくれなくなる、と剛は内心焦っていた。

"──それでもええから"

光一の言葉に頷いた諒希。窓際からいなくなった光一の背中を名残惜しそうに眺めた後、剛の方を見てパッと笑みを浮かべた。

──便箋買わなアカンわ

──こういうやつじゃアカンの

──お手紙やからなぁ。気持ち伝えるためにはしっかりした便箋やないと

小さいメモ用紙を取り出した剛だが、呆気なく諒希に却下された。
時折笑みをこぼして嬉しそうにする諒希を、剛はじっと見つめたまま。弁当を頬張る諒希の綺麗な瞳と目が合っても逸らさない。

──見すぎ

──ごめん。あまりにも綺麗で

──あまりにもって、

──恋焦がれるAくん、全部が綺麗

剛は手を伸ばすと骨ばった指の背で諒希の頬を一撫でする。
柔らかな諒希の頬。少し動揺したのか、諒希の瞳があっちこっちと移動し、耳を赤くする。
そんな諒希が堪らなく好きで、愛おしく思えて仕方が無い。何故、光一なのか。何故俺じゃないのかと考えてしまう。

──お手紙がダメやったら、どうするん？

──まだ、考えてへん

──自信満々や

──ほぼ振られるんやろうけどね

分かりきったこと。諒希は振り向いて貰えないと半ば諦めてもいた。
やっぱり無理なんだろうと、同性という時点で壁があるのだと。

そんな諒希を剛は励ます。
複雑な関係。好きな人の応援をするというのは剛にとってとても酷なもの。

──応援してる

──うん。頑張って手紙書くわ

諒希は激励をくれたお礼、と剛にお弁当のミニハンバーグをおすそ分けした。
そのお返しとして諒希に甘い甘い卵焼きを渡す剛。2人顔を見合せて"──意味無いやん！"なんて笑うのを、クラスメイト達は楽しくなさそうに見つめていた。