後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ17)

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#17. ページ17

諒希に対するいじめはじわじわと深刻になっていく。
机の上に花瓶が置かれ、それを見てクラスメイトは笑う。
精神的に追い詰めていく周りと、気にする様子も見せない諒希。
(……趣味悪)
内心では文句を言い、背後の棚に花瓶を置き直す。

そんな時、廊下を歩く光一が目に入った。

──光一くん

──ん、

──すき

──………毎日飽きひん？

光一は眉間に皺を寄せ、首を傾げて問いかけた
ほぼ毎日同じ言葉の繰り返し。言う方は飽きないのだろうか、聞く方はとっくに飽きてしまった。
それでも諒希は光一と話が出来ることが嬉しいのか頬杖を付いてニコニコと可愛らしい笑みを浮かべる。

──飽きひんよ。光一くんと話せるんやから

──…あんま、俺と話さん方がええで

──えー、なんでやの

なんで、と言われても。光一からはよく見える。諒希の背後、窓際に寄りかかって諒希をじっと睨み付ける生徒達が。
視線は全て諒希に集められている。そんな事にも諒希は気付く様子は無く、ヘラヘラと笑っていた。

──ほんまに、やめとき

──意味分からん、やめんからなぁ！

──やめろやめろ

──うーわ嫌な返事！！

歩き出した光一を窓から身を乗り出して見る諒希。
遠ざかる光一の背中をじっと見つめていると、いきなり何かが諒希に降りかかった。
ふわふわと舞い落ちる…なんて優しいものじゃない。バサバサと音がして、床に物が落ちる。

ふと振り返れば、"──あ〜、手が滑ってぇ"と明らかにわざとであろう言葉が投げかけられた。
男子生徒の手にはゴミ箱。中身は空だ。全て諒希にかけたのだから。

そのゴミの中には生ゴミも入っており、悪臭と変な液のようなものが制服に付いた。

──これ全部なおしてや

ゴミ箱を投げつけられ、渋々片付け始める諒希。
片付け終わると、その場で制服を脱ぎ体操着へと着替えた。汚れた制服は廊下の水道で水洗いし、廊下の窓を開け、そこにかけて乾かす。

自分は、周りの人の癪に障るようなことをしたのかと諒希は椅子に腰をかけて考えていると、肩にポンと手が置かれた。

──よ、おはよぉ。なんで体操着なん

──おぉ、剛くんおはよぉ。ちょっと制服汚れてもうて

思考を遮るように登校してきた剛が話しかけてきた。
何が原因なのだろうか、と教科書を机の中に入れていく剛を眺めながらまた考える。

諒希は何となく、薄々と原因が分かった気はしていた。