後悔をした。長く賑やかな、教室前の廊下で。 (ページ14)

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#14. ページ14

ああ、少しいい雰囲気だったのに。諒希はそんな事を思いながら教室へと戻る
教室には剛が席で話しかけられながら弁当を食べていた。
だが、特に返事をしている様子でも無く、話している側も一方的だった。

そんな剛を特に気にもせず、弁当箱をしまい、カバンに入れようとした時手首を掴まれた。
先程まで弁当を食べていたはずの剛が諒希の横に立ち、強く手首を掴んだのだ。
顔を上げる諒希と、眉間に皺を寄せながら諒希をじっと見つめる剛。
"──…剛くん？"
諒希は不思議そうに問いかける。

──なんかあったんか

いきなりの質問に少し戸惑う諒希。
なぜ分かるのだろう。何も話していないのに、と困惑気味の諒希に剛は続ける。

──なんでそんな顔してんねん。なんかあったやろ、言うてみぃ、何された

手首を掴んだまま剛は真剣に諒希の瞳から目を離さない。
諒希も剛の力強いその瞳に圧倒され、オドオドしながら瞳を逸らし、カバンにしまいかけた弁当を机に置く。
包みを開き、蓋を開けるとぐちゃぐちゃに散乱した弁当が。
まだ半分も食べていないそのおかずや米には埃が塊で沢山ついており、食べることが不可能なのはパッと見で分かるほど。

──…落としたん？

──や…、ちょっと、蹴られて

──光一に？Aくんが蹴られたん？

──あ、ちゃうよ。光一くんは何もしてへんねん

1人熱くなる剛をなだめようと、空いていた片方の手を剛の肩に添えて先程の話をした。
女子に蹴られた事。邪魔そうだからと帰ってきた事。それでも自分は大丈夫だと安心させる為か諒希は眉を下げて笑いながら話す。
"──僕が光一くんと弁当一緒に、とか烏滸がましかったわ"
なんて、なんの非が無いのに自分を下げる諒希に剛はキレた。

──どこがどう烏滸がましいねん！アイツも所詮同級生で同じ中学生やぞ！！なんで同じ人間にそこまで気ぃ遣うん、アホか？！それと自分を下げるような事言いなや！！

諒希の制服を掴んで壁に押し当て、真剣に剛は言った。感情的になってしまったのか、大きな声を上げてしまい、諒希は完全に驚き、怯えてしまい獲物に追い詰められた小動物の様に小さくなってしまっていた。
小さく震える諒希に気付いた剛はハッと我に返り、諒希の手を包み込むように握ると
"──…怒鳴ってごめん"
なんて、しゅんとした犬のように謝罪する。

静まり返る教室、諒希の浅い呼吸だけが響き、その瞳からは大粒の涙が溢れ出していた。