雑音の無い人【河上万斉】

ヘッドホン【side更木】 ページ7

……なぜ。よりによってこいつがあのヘッドホンを。


万｢拙者のお気に入りでござるからな｣


そいつは私の問いに対してそう答えた。


A『……そうか』


驚きが先に来てしまい、それしか答えられなかった。まさか、あの時の恩人がこの人だったとは思いもしなかったからだ。


(つくづく運が無いのかもしれないな……)


そんなことを思っていると、恩人の方から話し掛けてきた。


万｢そのヘッドホン似合っておるな、拙者と色違いでござるな｣


恩人の方は、きっと私のことなんて覚えていないのだろう。そんな風に言ってくるのも。


A『あぁ……、このヘッドホンは貰い物であり、私のお気に入りだ。あんたと同じようにね』


先に恩人であることを伝えた方がいいのではないかとも思ったが、相手が別に覚えていないならいいのかと思ってしまい。とりあえず会話を続けた。

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