見えない心 ページ15
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『理由…、聞いてもいいですか?』
賑やかな声が微かに聞こえる。
でもその音さえも塞ぐように、彼との空間に陥る。
亜「純粋に、ただ真っ直ぐに臣さんだけを愛してるAちゃんを見てると、
「あぁ、俺こんな風に誰かから愛されたかったんだ。」
「ただ自分を必要として欲しかったんだ。」
って、そう思ったんだ。」
『白濱部長…』
今まで聞くことのなかった白濱部長の心の中。
見たくても見られなかった彼の心はこんなにも脆くて、切なかったんだ。
亜「Aちゃん、さっき泣いてたでしょ?」
ふと問われた質問に、
『…見てたんですね』
そう答える。
それに軽く頷いた白濱部長は、続けてこう言う。
亜「俺その時、綺麗だって思ったんだよ。
こんなにもこの子を美しく泣かせてるのは誰なんだって、考えた。
あぁ、臣さんなんだ、
今この子が愛しているのは臣さんなんだ、
この子が流した涙は全部臣さんの為のものなんだ、って。
そう思ったら、当たり前の事が実感として
のしかかってきたんだ。」
夜空を見上げながら涙を堪えてそう言った白濱部長の横顔は、夜空より綺麗だった。
亜「だから思った、俺の為に泣いてほしいって。
俺だけの為にその綺麗な涙を流して、
俺だけの為に毎日悩んで苦しんで、
…俺だけを愛してほしい、って」
この気持ちにどう答えるのが正解なのか、
彼の本音を聞いて、叶えてあげるのが答えなのか。
…いや、そんなのただの同情に過ぎないじゃないのか?
沸き立つ心とは裏腹に冷静になって頭で考えても答えは出ない。
亜「…ごめん、無神経な事だって分かってる。
普通はAちゃんの気持ちを優先しなきゃいけないのも、これが余計にAちゃんを困らせてるだけだって事も。」
でも、と続けた白濱部長の瞳には色があるようで、色はなかった。
亜「…もう俺、我慢すんの無理だわ…」
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賑やかな声が消えていく。
街の灯りが消えていく。
なら次に消えるのは、先輩への想い?
何が正解で何が間違いか。
そんな事、誰にも分からない。
沢山のお金よりも、綺麗なドレスよりも、
『ありきたりな言葉』
それが1番人を狂わせる道具かもしれない。
ゆっくり落ちていく光とは裏腹に、
亜「好きだよ、Aちゃん」
彼の言葉だけが、耳元で木霊した。
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Honey(プロフ) - まゆさん» 感想や温かいお言葉有難うございます!!オチなどはまだ詳しく決めていないのですが、ご期待に添えるようこれからも中務さんとのお話沢山書かせていただきます!これからもよろしくお願い致します(*^^*) (2018年12月3日 15時) (レス) id: 2fd9802047 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - このお話すごく大好きです!みんなも恋愛感情が色々と渦巻いていて読んでいてキュンキュンするし、考えさせられるお話です!私は裕太君が大好きなので主人公ちゃんには裕太君とくっついてほしいですけど、今後の展開がどうなるのか楽しみにしています! (2018年11月29日 11時) (レス) id: 727ab08095 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Honey | 作成日時:2018年8月28日 11時