この気持ちの名前を知りたい【堂上篤】 (ページ9)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:11,968 hit

同期..006 Kurokage side ページ9

いきなり、月光に呼び出され行った先は共同区間。

黒影「なんだよ、いきなり。こんな遅い時間に呼び出したりして」

『郁ちゃんのコトだ。あの子にキツい物言いをしたんだって??』

黒影「別にキツく言ったつもりはない。思ったコトを言ったまでだ」

多分、月光は笠原から俺が言ったその一言しか訊いていないんだろうが、俺はそのとき「不審人物に気が付いたのは良い判断だった」と吐き捨てるように呟き、その場をあとにした。

まあ、どうせ訊こえてなかったんだろう。

俺がどれほど言ったと発言したところで、相手に訊こえていなければ......伝わっていなければ。意味がない。

ソレはわかっている。そしてそのとき俺が1番伝えたかったコトバも、わかっている。

「心配するコッチの身にもなれっ、1人で無茶をするなっ、」とでも、言いたかった。

俺と、約束して欲しかった。もう2度と、あんな無茶はしないと。

けれど、そのコトバをヤツに伝えてしまったら一線を越えてしまう気がした。だから俺は、伝えられなかった。

自身の気持ちから目を背けすべての感情にフタをした。

もう、誰にも開けられぬように鎖を何度も何度も巻き付け、鍵を掛け誰にも見つからぬ場所へ隠した。

そして、あのとき犯した過ちを2度と繰り返さないと誓った。周りに迷惑を掛けてしまうあの性格も、堂上と共に捨てた。

『郁ちゃんの頬、紅くなってたぞ』

黒影「っ、」

月光がそう言い捨て、女性寮へと戻っていった。

俺は、ビールを1本自販機で買って戻った。