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「なんで…
どこから調べたんですか?」
「記事と捜査資料を読んだ。」
「俺の知らない間に!?」
「裏カジノの一斉摘発から5日後の2017年1月16日、当時羽野麦が勤務していた幼稚園近くの工業団地で辰井組による発砲事件が起きた。
被害者はAA。」
詮索されたくない過去なのだろう。
俺も多分、あの日同じ顔をしていた。客観的に見るとよく理解できる。
「でもハムちゃんが会いたがる理由は?」
「その事件以来会ってくれないから、お礼がまだ言えてないんだと。直接言いたいらしい」
「…現行犯で捕えようとしただけで彼女を助けたわけじゃない、お礼を言われる筋合いはありません」
頑なだな。
最近心を入れ替えたのか、捜査中フラッといなくなることは減ったのに、今度はグズグズ2年も前のことを引きずって手がかかる奴だ。
といいつつ、6年も前のことを未だに引きずる俺に言い返すことはできない。
「何にせよ、志摩さんが自分を追い詰める必要はないです。」
「……は?」
「盗聴器が仕掛けられたのは自分のせいだって罪悪感を感じすぎ。それは…私1人が背負うものです」
そう言い放つと、彼女は「お先に失礼します」とここから逃げるようにして立ち去った。
どこか泣きそうな彼女に俺も伊吹も気を取られ、止めることができなかった。
「なァ志摩…」
「なんだよ」
「俺が志摩のこと調べた時、ウザかった?」
「非常に。」
「だよねー」
自覚あったのか。
「じゃあもう立ち直れた?」
「…前にも言ったが、ウイスキーはまだ飲めない」
「まじか、無理だったかー」
ショックを受けていそうだったから「まあ、ギャフンとは言わされたな」と素直な言葉を口にしてあげた。が、その気遣いが後に面倒になるのを忘れていた。
後ろからニヤついた顔で俺の名前をしつこく呼ぶこいつはもう、ほんっとに面倒くさい。
「離れろよ暑苦しい」
「素直じゃないなー嬉しいくせにー!
…でも、Aちゃんはエトリを捕らえたら、助けられるよね」
Aの跡を辿るように伊吹は目を動かした。その瞳はさっきと違って真剣なものだった。
「…そうだな。」
「よっしゃ!!!
早く見つけてとっ捕まえようぜ!!」
軽い口調で吐かれた台詞だが、俺は重みがあるように聞こえて俺は「ああ。」とだけ返事をした。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時