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「ねーAちゃん」
「…」
「ねーねーねー」
「…」
「AのAちゃーん」
「…」
「よ、検挙率トップ!!」
「…」
「あ、ハムちゃんだ!!」
「…」
「もしもしハムちゃん、Aちゃんがね、ずっと無視するんだけどさー」
「…」



メロンパン号内は伊吹の独り言が炸裂してそれはそれは大層な賑やかさだった。
伊吹が荷台から顔を出すようにして運転席のAに懸命に話しかけるが、全て一方通行で会話のキャッチボールは全く成功していない。独り言で済まされている。

間に挟まれる俺の気持ちになれよ…

そう思いながらも反応するのは面倒で返さずにいた。



「走行中は危険ですので着席するようお願いします」
「…バスドライバーかよ」
「いや座ってるから、見てほらシートベルトちゃんとしてる」

「そんなの警察なら当たり前の事です。
 あ、9時になりましたね。」




「…機捜404から1機捜本部、墨田署管内ヘルプの重点密行終了。分駐に戻ります」

『1機捜了解』











「ねーAちゃん、お話しようよー」
「してるじゃないですか」
「違うじゃん!!!ハムちゃんとAちゃんの関係についてだって!!」

伊吹がしつこく付き纏うのをAが華麗に躱し続けること早3時間。
めげない伊吹も凄いが、苛立つ様子を見せず無表情で淡々と仕事を終えるAも凄い。


「志摩ちゃんだって知りたくない?Aちゃんについて!」
「俺はどっちでもいい」
「そんな志摩は置いといて」
「じゃあ聞くな!!」

「はい!!Aちゃんシットダウン!!」


とうとう肩を掴まれたAは強制的に座らされると、一瞬だけだが今日初めてスッッッッゴイ面倒臭そうな顔を見せた。


「…関係って言われても他人ですよ、それ以上でも以下でもない」

「メロンパンパーティーしてた時にハムちゃんに電話かけたんだけどさー、
 Aちゃんのこと“会いたい人”って言ってたよ。なんで?」
「知りませんよ、羽野さんに聞いてください」

「じゃ、Aちゃんはさー

 なんで会いたくなさそうな顔をしてたの?」


伊吹の質問は核心をついたのか、Aが黙り込んだ。無表情なのは変わりないが。






「…“会いたくない”んじゃなくて、“会う資格がない”んです」





そうやって自嘲気味に笑った彼女を見て、
『羽野麦を危険に晒したのは自分だと責めてるの』
と言って困ったように笑った隊長の顔がパッと頭に思い浮かんだ。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時

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