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「Aちゃん知ってたの機捜の仕事!」

「所轄の前に少しだけですけど機捜にいました」

「でもぱっとしない!!」

さっきの"初動捜査"を引きずってるのか、伊吹さんがうるさい。
その傍ら書類をまとめていたら日が暮れてしまい、外に出ると小粒程度の雨が降っていた。
分駐所に戻るため小走りで車に向かい、鍵を開けてもらって後部座席に乗り込んだ。


「やりがいは?機捜のやりがい」
「これが仕事、職務」
「警察って命懸けっしょ?
 なのに給料高くない、捜査一課なんていったら四六時中捜査に明け暮れて家にも帰れない。
 それでもなんでやるのかって言ったら、正義感。犯人を捕まえたい…それしかないっしょ。
 なのに機捜はその前で終わる!張り合いない!!」

伊吹さんの我儘に志摩さんとため息が被った。
幸せなんて持ち合わせてないのに今日だけで何回幸せが逃げただろうか。
…むしろマイナスだ。


「だから、機捜はそういう仕事。当番勤務は24時間。
 24時間の間にできる限り尽くして検挙率をあげるためのパーツとして働く。
 自分の満足のためじゃない」

「パーツ…?」

「あとひとつだけ言わせて貰う。」
「まだ言うの?」

「俺は自分のことを正義だと思ってる奴が、1番嫌いだ。」


重い言葉が志摩さんの口から放たれ、沈黙が訪れる。
そこに無線の音が鳴り響いた。


『警視庁から各局、墨田署管内吾妻西公園付近にて64歳が行方不明』
「一度分駐所に戻「ちょったんまたんま!」

「徘徊老人の保護は機捜の仕事じゃない」
「しーっ!」

『着衣はグレーのカーディガン、ピンクのストール、花柄の杖、近い局捜索願いたい。』

「昼間のばあちゃん家に帰れてない…」

「おばあちゃん?」
「さっきのドライブレコーダーに映ってた、転んだお婆さん見た?
 その人。」

「あー…」


志摩さんから説明を受けて脳内で映像を再生する。所轄の人に見せたとき交差点の横断歩道を渡ろうとしていたおばあさんらしき人が転んでいたのを思い出した。
何かおもちゃのステッキを探していたらしい。

…人探しは機捜の仕事ではないし、生活安全課に任せるべきだ。
それでも伊吹さんは納得しておらず、痺れを切らした志摩さんも車を墨田署へと戻してあげた。






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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時

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