のんきな猫と死にたがり (ページ37)

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西武蔵野署との合同会議が始まった。
さっき聞き出せた“トローチみたいな薬”の正体は、今若者に手に入りやすくて話題の“ドーナツEP”という薬物だった。

「ドーナツEPはここ最近六本木を中心に流通している物です。合成麻薬MDMA系のドラッグで特徴はその真ん中の穴」

陣馬さんから写真を見せられる。
5円玉より小さなソレは、カラフルなパステルカラーだけど見た目に反してとても依存性のある怖い薬。

「これまで税関では上げられてなくて、製造国は不明…
　従来のMDMAより粗悪で安い値段で出回っています。」
「つまり、若い子が軽い気持ちで手を出しやすい。
　中毒性も強いから、一度手を出したら辞めたくても辞められない終わりのない地獄」

「これを陸上部の奴らが学校内で売ってたってこと？」
「廃部にまでしたってことは、陸上部全体に拡がっていたんでしょう」
「廃部前の名簿を出させよう。その中に、売人の生徒と今回の虚偽通報の生徒がいる」

桔梗隊長に「うんうん」と皆頷いていると、西武蔵野の警官である毛利さんは難しそうな顔をした。

「いやー、でもあの校長がそんなに素直に提出しますかね」
「強制的に出させる」

聞くとバシリカの校長は、話の通り気難しい人で"何か"隠しているのは確かだが"何も"聞き出せていない状態らしい。

こちら側としては虚偽通報者がバシリカ高校3年の成川岳ということは分かったのだが、これだけでは証拠不十分で手は出せない。強制的は難しい気がする。
すると伊吹さんが成川の写真をヒラヒラさせて「よし！こいつ逮捕に行こう」と言った。

「何を言ってんだ、この写真だけじゃ証拠にならない。しかも相手は未成年、慎重に話聞かないと」

「声紋分析の結果はどうなったんですか？」
「この声。」

志摩さんから分析結果の音源を渡されて再生すると、

《助けて！
　殺される！！》

女の子の切羽詰まった声が聞こえる。
これを聞くだけだと虚偽か本当かは判りかねる。

「虚偽の通報の4件はいずれも同じ女性。
　年齢は10代後半と推定。」
「これも陸上部の生徒でしょうか。」
「マネージャーかも」
「よし！バシリカ高校の女生徒集めて1人ずつ録音して照合すれば通報した子がわかる！」

「いーやぁ、それも学校が許可しないでしょうね…」

「おたくやる気あんの？」

伊吹さんが毛利さんに睨みを利かすが、どう考えてもあの校長が悪い。毛利さんを睨んでも仕方ない。

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