のんきな猫と死にたがり (ページ38)

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「もし同じ声の生徒を見つけても本当に追われてましたと言われれば否定はできない」

「そんな高校生頭回る？」

「大人がバカなんですよ。

　若い人が何も考えていないと思ってる。
　そういう意味では相手が未成年でも厳しく対処するべきだと思ってます。減刑も必要ない、等しく罪の責任を取らせるべきです」

九重さんの口が回る回る。

「勿論相手が未成年だとしても取り返しのつかない犯罪があって、それ相応の罰は受けてもらう。だけど救うべきところは救う、というのが少年法」
「その少年自身が未成年を笠に着て好き放題していてもですか？」
「私はそれを…

　彼らが教育を受ける機会を損失した結果だと考えてる。
　社会全体でそういう子供達をどれだけ救いあげれるか……

　5年後10年後の治安はそこにかかってる」

言い終わると隊長は私に微笑みかけてくれた。
女というだけで差別を受けたりナメられたり…それでもこの役職に就いた隊長は、私の想像以上に芯の通った強い人なのだ。

だから、私も「隊長…」
……遮られて伊吹さんを見ると

「俺隊長のこと好きだわ」

一瞬時が止まった気がした。
…私の感傷に浸っていた時間を返せ野生育ちヤンキー男。

「俺の中の少年が隊長にビビっと…
　痛ッ！ちょ待って、なになに？」

志摩さんは伊吹さんの片手に手錠を掛けると、もう片方をホワイトボードに引っ掛けて身動きが取れないようにした。

「野生の獣には檻が必要でした」
「俺はただ素直な気持ちを言っただけ！」
「お前の中の少年なんて知りたくもないわ！」
「いやお前に言ってないから！」

「…なかなか愉快な職場ですね」
「大体こんな感じっす」

毛利さんはかける言葉が見つからないのかオブラートに包んでくれた。陣馬さんの言う通り、大体こんな感じです。すみません。

「高校の名簿の件は書類待ち。生徒たちの方はまた通報してこなきゃ良いけど…」
「しないでしょう、」
「いいや、奴らはまたやるね」
「常識的に考えてこの状況は…」
「お前の常識とか知んねぇけどさ、九重は奴らと自分似てると思う？」
「はい？
　犯罪者と一緒にしないでください」
「だろ？違うだろ？どっちかっつーと俺寄りのバカだろ？だったら俺の言うこと聞いとけ」

「……よし、バカ代表」

「おう」

「どうしてまたやると思った？」

「走りたいから。走りたいんだよ。
　それだけじゃん」

言ってる事は滅茶苦茶だが、伊吹さんの声には面白いくらいに説得力があった。

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