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社長と呼ばれる方は私がテレビでも見たことある人だった。もちろん彼が会社を立ち上げてYouTubeなどにも積極的に参加していることも知っていた。けれど前職ではYouTubeを見る時間はおろか、テレビを見る時間もろくに無いほど忙しくて、伊沢さんを最後に見たのは何年か前の東大王だった。そういえば彼はもう東大生じゃないけれど、どうなったのだろうか。

そんなことを考えている間に、今私の目の前にいる伊沢さんは社則や機密情報の取扱について書類を並べながら淡々と説明している。こういうのって普通社長じゃなくて他の方がやるものじゃないのかなぁ。

いつの情報だったか東大生が尊敬する大学ランキングみたいな、そういうので私の母校が選ばれていた記憶がある。それでも私は東大のほうがすごいよなと思う。だって私と伊沢さんってたしか歳が変わらないのに社長さんをしているのだから。方やブラック企業の平社員だったわけで。

「以上です、分からないことありますか」
「あ、いえ、何も」
「じゃあ設備の紹介と、そうですね、ついでに他の社員への挨拶も済ませますか」
「え゛っ」

しまった、挨拶については何も考えていなかった。
頂いた書類をクリアファイルに挟んで鞄に入れたときには伊沢さんはもう立ち上って歩き出していた。慌てて後を追えば、すでに伊沢さんは扉に手をかけていた。

「こちらの部屋が社員の作業スペースです、あっちが撮影部屋。Aさんにはここで作業してもらうことが多くなると思います」

あぁ、待って、せめてお化粧くらい直したかった。髪型変じゃないかなぁ。
扉が開けば、そこにいたほとんどの方が此方を一斉に向く。この一気に注目を浴びる嫌な感じは歳を重ねても多分慣れることはないんだろう。

「今日からデザイナーとしてウチで働いていただきます」
「えぇとA Aです。皆さんのお役に立てればと思います、是非よろしくお願いします」

無難な一言しか言えなかったけど、皆さん拍手してくださってとても暖かい雰囲気なのは伝わった。前職のような体育会系の自己紹介をさせられなくて本当によかったとホッとする。
私が使うであろうデスクに案内されるとPCや、それに内蔵されているソフトなどの説明を軽くされたところで今日は以上です、と言われる。

「以上、といいますと」
「言葉通りです。今日は終わり。はい、おわり。は〜〜堅苦しいのは無理だわやっぱ!」

混乱する私を見かねてか、他の方が私に彼の言いたいことを翻訳してくれた。

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月華(プロフ) - 初めまして。月華と申します。いつも更新を楽しみにしています。これからまた山本さんもなんとなく加わって、関係性がどうなっていくのか?楽しみにしています。 (2020年9月7日 22時) (レス) id: 7021cebe65 (このIDを非表示/違反報告)
かもめ(プロフ) - 亜杞さん» わーん!誤字!ご指摘ありがとうございます、気を付けます。 (2020年9月3日 2時) (レス) id: 87fffe4b37 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - 初コメント失礼します。“4”の中の言葉で“誘いそう”が“誘いさう”になってしまってます。素敵な文章ゆえに気になってしまって。。。今後も更新されるのを楽しみにしています。失礼しました。 (2020年9月3日 1時) (レス) id: 4b3f3a4234 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かもめ | 作成日時:2020年8月26日 19時

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