短編集【QK】 (ページ12)

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カトル・カール_fkr ページ12

「小麦粉、砂糖、バター、卵という4つの素材をそれぞれ1ポンドずつ使用して作るという意味がある、イギリス発祥のケーキを何と言う？」

彼はこの文章なら迷わず答えを言えるのだろうが、私が彼に差し出した手作りのお菓子を見て彼は言う。

「これって何て言うお菓子？」

スライスして提供したのがよくなかったのだろうか、私はキッチンからまだスライスしていない状態の物を見せてみる。彼は首を傾げる、嘘でしょ。

「えぇ…俺知ってるやつ？」

もちろんですとも。名前の由来までしっかり暗記なされていることでしょう。
なんか同じような状況、昔の東大王でも見たなぁ。“お菓子の写真を見て、そのお菓子の名前を言う”コーナーでは東大王チームはボロボロに惨敗していた。知識として存在は知っているけど、ビジュアルと一致しないと林くんが言っていたような。それって知識って言っていいの？って視聴していた私は疑問に思った記憶までご丁寧に残ってる。

それはさておき、目の前の彼はウンウン唸りながらお菓子の名前を考えている。しょうがないから見よう見まねで問読みしてあげよう。

「問題。小麦粉、砂糖、バター、卵という4つの素材をそれぞれ1ポンド…」
「あっパウンドケーキ？」
「せいか～い」
「これがそうなんだ！」

アンタもかい、と思わず突っ込みそうになった。目尻を下げてニコニコしながらパウンドケーキを頬張る。普段はしっかりしていて、作る方が強いとか軍師みたいな発言が多いのに、食べる時は子供のよう。ついでに野菜の時の顰め面も子供のよう。

私のパウンドケーキには基本的にいつもラム酒漬けにしたフルーツを入れたりしていて、自分で言うのもなんだけど結構おいしい。

「Aちゃん、お菓子作るの上手なんだねぇ」
「毎日作ってくれたらいいのに」

あ、こいつ、毎日夕飯で食べるのに～とか言い出すんだろうな。遠回しに野菜出すんじゃないとも言ってるな。その手には乗りませんし、乗れません。

「お菓子作りって大変なんだよ。お金も結構かかるし」
「え、そうなの」

そうだよ、もう。

「Aちゃんといると、知らないことたくさん教えてもらえるなぁ」
「知らないことなら河村さんとかのほうが教えてくれそう」
「いやぁアイツがパウンドケーキ教えてくれるとは思えない」
「たしかに」

私とは比べ物にならないくらい物知りな彼に教えることができるなら、明日もお菓子作っちゃおうかな。明日はガトーショコラを教えてあげよう。