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「捏島さん？」
端の方で壁に背を預け、ボーっと突っ立っている捏島さんが視界に入る
話していた友人に断りを入れ、彼に近寄り話しかけるが何も反応は無い
彼の親しそうな部活の先輩たちは中心の方で一年と肩を組み、菓子を進めている
まるで絡み酒だ
それよりも今考えていることは目の前の捏島さんのことだ
そういえば今日は直前までチーノと話していたからか、部活開始前に彼と話すことは無かった
チラッと見たときは鬱さんたちと何かあったのか、抑えきれていない笑いを押し込んでいたような気がする
部活終了後ミーティングで歓迎会という言葉を聞いた直後、何故か呆然とし始めたような様子だったかもしれない
「捏島さん！」
「.....。」
少し大きめに呼んでみたもののやはり無反応だった
無視しているわけではなさそうだが、これ以上話しかけるのもあまり意味もなさそうだ
どうせいつも通り燥いでいるから疲れてしまっただけだろう
そう結論付けていると、漸くこちらに気付いた先輩たちが近づいてくる
変にテンションの高いその群衆に巻き込まれないよう、目の前の警戒心ゼロの先輩を置いてその場を離れた
*
「あ、ショッピ君じゃぁん。」
「....どうも。」
昨日の捏島さんが気がかりだったものの、まぁどうせいつの間にかいつもの様子に戻るだろうと特に何かをすることもなく朝練を終える
生憎、部活同輩には同クラスの人がいないため一人で教室に向かっていれば後ろから声をかけられる
最近よく聞く声に振り返れば、そこには鬱さんが右手を上げて立っていた
「なに、部活もう終わったん？」
「てかそろそろ朝礼ですけど。」
「マジ？急がな！」
じゃあな！と叫んで走り去っていく鬱さんだが、どうしてもその背中を訝し気に思わずにはいられなかった
別に彼自身に何か変な言動があったわけではないし、何なら声音もいつも通りだった
だが、
「あの人、一年のフロアに用事あったんか....？」
意気揚々と彼について話してくる捏島さんから、未だ一年生に彼女を作ったなんて情報は回ってきていない
なんなら最近、擦られるのが嫌になってきているという彼はこちらにそう言った類の話を出すことが多くなってきた
「....先生に用事か？」
多分、去年から仲の良い先生に何か用事があったんだろう
それならば職員室に行くだろう、なんて本心は無視して気に留めていたことを忘れ去った
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作者名：みつくろりん | 作成日時：2021年12月6日 0時
