【d!】可変に笑え (ページ12)

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　十数人かはいた立候補生から五人を選出する
元々この学校の生徒会自体緩めで、毎年役員全員で予定を決めて引継ぎを行うことができるのだが、今年は時期が早すぎるのだ

というのも前会長の受験勉強に専念したいとの希望により引継ぎを急いたのだ
一年生の時点で生徒会役員だったから推薦されてしまったのだと当選当時から嘆いていたのを知っている役員一同は、彼女の下した判断に反論しなかった

その時の室内が妙にあたたかな視線で満ちていたことは会長さんは気づいていただろうか
廊下で見かけるたび分厚い参考書を何冊も持っている彼女の隈が酷くなっているのは現役員全員が心配しているなど言うまでもないが、初志貫徹な彼女からしてみれば第一志望入学に命を懸けているといっても過言ではないのだろう

今はおとなしく見守り、卒業間際辺りに先輩たちの合格祝賀会でも開こうかとこんなにも早くから計画されているのは、彼女の人柄に影響がある

「おら、さっさとそれ名前書けや。」

「んもぅ、そんな急かさんでええよ？」

「書かへんから言っとんねん。次回から一年も仕事入るんやから、先輩としての威厳保て？」

そういえば知らないうちに一年生の役員は決定していたらしい
ロボロに聞いた話では例の瓶底眼鏡男もしっかりと役員として採用されたそうだ

「ほい書いた、トイレ行ってくるわ。」

手元の書類をトントンに渡し、教室を出て廊下を歩く
曲がり角を曲がろうとしたとき、突然現れた図体とドスッと音を立ててぶつかってしまった

「あ、すみません。注意不足でした！」

「あ、あぁ大丈夫です....！」

ズレてしまった眼鏡を整えながら前方を確認すると、見覚えのある眼鏡と淡色の髪が視界に入る
ぶつかったのは瓶底眼鏡男だった

「あれ、生徒会の方です？」

「あーどうも、どうやら君も役員になるようで？」

「はい、よろしくお願いします！」

　会話は途切れてしまうものの、お互い沈黙したまま笑みを浮かべて停止する
今すぐこの場を離れればいいものの、なんだかここで退いたら負けるとかいう謎の感情が湧き出てくる

「鬱島さん、で合ってますよね？」

「せやで。僕は君の名前覚えてないけど君のこと自体は知っとるよ、そういえば今日の五、六限に塩戸君と喋っとったよな？」

「あれ、見られてましたか。いやぁお恥ずかしい、初めてあんなにも気の合う友人を見つけてしまったもので、ついつい時間を忘れてしまったんですよね。」