コウモリ傘【灰谷竜胆】 (ページ9)

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【竜胆さん】ページ9

「38.7……」

ピピッと音が鳴って、表示された数字に頭を抱えた。目の前で魘されているお兄さんは、時折、「兄ちゃん……」と口から溢している。

これほんとに傷からの熱じゃないのかと心配になる。

「枕、変えますね」

ドラッグストアで買って、冷凍庫に放り込んだアイス枕が凍ったタイミングで枕をそっと変えた。

「起こしちゃいましたか？」

「ん……お前、まだいたのかよ」

「そりゃあ、私の家ですから」

包帯を巻いているので、冷えピタが貼れない。

「お兄さん、起き上がれますか？」

「ん……」

ゆっくりと支えて、起き上がってもらう。

「これ、飲んでてください」

渡したのは、飲めるタイプのゼリー。10秒飯のキャッチコピーで有名なアレだ。

「いらねぇって……」

「食べ物じゃないですから」

また逡巡して、パキキ……と音がした。ぢゅっと吸う音が部屋に響く。トレーに乗せた解熱剤とペットボトルの水を渡す。こちらを探るような、警戒した顔をするお兄さん。