逃げても逃げても何度でも

【meeting again】 ページ32

警視庁内で直人くんを待つ。


あの後、東京卍會の捜査は日を跨いで続き、なんとか確保まで至った。


取り調べの結果、役員だと思われていた被疑者は、キャッシュカードを持たされた身代わりの組員だったけど…


なんというか…うらやましいくらいに逃げ上手


「Aさん！」


「あ、直人くん！」


「すみません！」


「ごめん！…え？」

顔を見て同じタイミングでお互いにビシッと頭を下げた私達は、傍から見たらコントなんじゃないかと思う。


「と、とにかく話そう！」


慌てて顔を上げて、直人くんを傍の会議室に誘導した。


「怪我させてごめんね」


「あのくらいなんともありませんよ。それに貴女の所為じゃないでしょう。…僕こそすみません！わかっていながら貴女を救えなかった」


「それこそ直人くんの所為じゃないよ。そういえば、花垣くんは？」


なんだか気まずくて咄嗟に話題を変えれば、直人くんはさらに複雑な表情になった。


「直人くん？」


「…今回の武道くんは、東京卍會の幹部として僕たち警察に追われています」


「え！？」


「現時点で彼を確保する以外に連絡の取りようがありません。立場上、こちらから接触を図ることは難しいので、合流のためにも一度、彼を確保します」


「わ、わかった！」


「Aさんのことでも、まだお話したいことがありますが、まずは武道くんと合流しましょう」


直人くんは、あちら側に情報提供者がいると教えてくれた。
その人が今晩、花垣くんに引き合わせてくれる手筈になっているそうだ。


協力してほしいと言われ、二つ返事で頷く。
私は取り調べ室の確保、調書の作成を担当する直人くんの部下に変わって取り調べ室で調書を取ることになった。


本来、私達の部署の担当業務ではないため、少し手こずりそうだ。


「上に漏れては困るので、動く際は、内々に」


「了解！少し手こずりそうだけど…直人くん達が戻るまでに予定の取り調べ室、なんとかしておくから任せて！」


「行動開始ですね！」


「ポーカーフェイスだね！」


私達は、少し時間をズラして会議室を出る。
そのまま何食わぬ顔で持ち場に戻った。

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