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宮城にフェイクの指導を受ける桜木を見て、微笑む晴子と水戸。
九井は桜木のその姿に、昔の自分の姿を重ねて見ていた。
「そんじゃハルコちゃん。」
水戸は晴子に軽く手をあげた。
「あっもう帰るの?洋平君。」
「ああ 今日バイトあるから。」
晴子が洋平に向き直る。
「でもよかったね。桜木君もう完全にバスケが好きになったみたい。陵南戦でも初心者って思えない活躍だったし。楽しみだよね。」
「それ花道に言ってやんな。今の倍はすごいことするぜ。」
そう言って去っていく洋平に、晴子は笑顔で手を振った。
九井はもしかして…と思い松井に目を向けると、松井は呆れたような顔で笑っていた。
初対面だった九井でさえ一瞬で桜木の晴子に対する好意がわかったというのに、晴子は全く気づいていないのだ…と。思わず苦笑してしまう九井だった。
「よーし集合!!始めるぞ!」
うさぎのTシャツを着た眼鏡の青年が合図を出す。
「ん?ゴリがいないぞ?」
と桜木がキョロキョロしていた。
ゴリ…が誰かはわからなかったが、恐らく身長が2メートル近くあるというキャプテンの晴子の兄のことだろう…と察した。
「ああ、赤木は少し遅れるよ。課外授業だ 物理の。」
そう眼鏡の青年が言うと、一部の部員たちが似合わん…とざわついていた。
自分の実の兄がそんな扱いされていいのかな…と晴子に目を向けると、ニコニコと微笑んでいた。
…だが、その後ろにありえないものを見てしまった。
「は…晴子…」
九井とほぼ同じタイミングで気づいた藤井が、後ずさり晴子にぶつかる。
「ん?……!!」
咄嗟に、隣の松井の手をとり体育館に駆け込む。晴子も藤井の手をとって、4人で体育館の隅に走った。
「湘北ーーー!!」
部員たちが声を揃えようとしたところだった。
ダンッ…
と足音が体育館に響きわたった。
「オレたちもまぜてくれよ宮城。」
髪の毛をワンレンに伸ばした男が、落ちていたバスケットボールを拾って言う。
次々と、体格のいい不良男たちが土足で体育館に上がり込んでいく。
恐怖と怒りで、思わず震えが止まらなくなる九井であった。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時