４９ 幼子の恋と高校生の嫉妬 ページ49
ソファに幼い鶴崎と隣り合って座る忍霧。鶴崎は嬉しそうに赤松について話している。幼いながらにいっぱいいっぱい言葉を並べ最上級の愛を述べる。「かわいい」「奇麗」「好き」「大好き」一言一言、一単語一単語を大切そうに並べ精一杯愛を述べる鶴崎。忍霧はそんな彼女を可愛らしく思う反面多少の嫉妬にかられた。この後を知らなければ「幼子の可愛らしい女子高校生への憧れ」辺りで済んだであろう。しかし忍霧は知っていた。彼女らが永遠の愛を誓ったことを。現に彼女の薬指にはあの指輪がはめられていた。
そして現在の鶴崎はまだ赤松の事を愛し続けていることも忍霧は知っていた。だから多少の嫉妬を持った。幼子に対して持つような感情ではない気もするがそんなことには気づいていなかった。赤松の話をする鶴崎のつぼみはどんどん大きくなっていく。今すぐにでも開花しそうなぐらいに。きっと綺麗な花なのだろうなと他人事の用に思いながら幼子の恋に耳を傾ける。
鶴崎「いつも一緒に寝てるんだよ？ミウちゃんね、ぎゅーってしてくれるの。もちろん私もしてるよ！すっごく暖かくてね、甘いの！あ、後ねごはんも一緒に食べるの。朝と夜！お昼はお休みの日にしか食べれないけどそれでも嬉しいの！ミウちゃんのごはんはとってもおいしんだよ？卵焼きすっごいふわふわなの。あとミウちゃんのやりたい放題カレーも好きなの！いっぱいいろいろなのが入ってるんだ！あとお風呂も一緒に入るの！この前初めて泡ぶろっていうのもやったよ？楽しかったなぁ・・・あ、ごはんで思い出したけどミウちゃんウェディングケーキ作ってくれたこともあるよ？ケーキは作ったことなかったから小さくなっちゃったらしいけど私ミウちゃんが作ってくれたってことがうれしかったの！！それからそれからね！」
見たこともないくらいに瞳を輝かせ無邪気な笑みを浮かべ愛を語る。黒い瞳は砂糖菓子のように光り輝き頬は肌が白いためか分かりやすく赤くなっている。身振り手振りで愛を述べる姿はいじらしく、愛らしい。そしてついに、ポンと音を立てて花が咲いた。色とりどりの飴が入った瓶が咲いた。これを咲いた言っていいのか怪しかったがそう言う事にしておいた。そんなことにも気づかずに愛を語る鶴崎。
手を動かし、口を動かし、嬉しそうに顔をほころばせて。
自分の想い人の見たこともない表情、姿、言葉。自分に向けられたら死んでもいいと思えるほどの甘い愛。
忍霧の心に嫉妬という苦味が芽生えた瞬間だった。
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作者名：安良岡 | 作成日時：2019年7月28日 14時
