月明かり ページ43
…息を呑んだ。心臓が大きく鳴った。目を見開いた。ほぼ同時に俺の身体はAの姿を見て騒ぎたてる。ドクン、ドクン、と不規則に動き回る心臓。虫の小さな声と風の音が遠ざかっていくように感じた。聞こえてくるのは、俺の鼓動だけ。
まるで、世界に俺一人、いや、俺と、Aの二人だけになったような、そんな感覚に陥る。
土(…アイツ…)
屯所の電気は消え、月明かりだけがその場を照らす。空には欠けた月と、小さな星たちが瞬いていた。そんな夜空を見上げながら、ソイツは、Aは、
…今にもその大きな目から涙が溢れ出してしまいそうなくらいに、悲しげな顔をしていた。いつも見ているような、無駄に明るい笑顔からはかけ離れている、切なげで、儚すぎる顔。
土「…っ……」
俺はただ、何をするでもなく、歩み寄るでも声をかけるでもなく、そこに突っ立っていた。呆然と、遠目から見えるそんな顔を見つめながら。
……ソイツのそんな顔に、見とれていた。
月明かりに照らされたソイツは、文句のつけようもなく綺麗で。
何かを慈しむような、何かを思い出しているかのような。優しげで悲しくて、まるで、何か愛しいものを見つめているような。
Aの目は、月を見ている。
でもきっとA自身は、違う“何か”を見ている。
なんでか分からねぇがそう思えた。
土「…」
そして俺はそのまま、何が出来る訳もなくその場を跡にし、自室へと歩を進めていく。
何か、俺の中を駆け巡るものを沈めようと努めながら。
…Aが何を隠していようと、何を抱えていようと、追求するつもりも干渉するつもりもねぇ。人間隠したいことの一つや二つ普通にあるもんだ。
だが。
土「……クソ、」
あの笑顔の裏に隠された何かが、アイツの抱える何かが、気になってしまったのは、不覚だった。
俺の中にある何かをかき乱されたような感覚に眉をよせ、頭をわしわしとする。
…目に焼き付いて離れてくれそうにねぇな、なんてことを思い、自室の襖を閉めると俺は自嘲するような笑みを浮かべた。
*
「ー・・・…ん、け…」
*
……Aが何を思っているかなんて、知りもしないまま。
銀魂!ラッキー食べ物オオオ!!
卵かけられご飯
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パエリヤさん - やばい…やばいです…めっちゃ面白いです… (2021年11月6日 17時) (レス) @page48 id: cc2519b90c (このIDを非表示/違反報告)
ぽんち - すみません…結構前のでしたね…ごめんなさい。お気になさらず (2019年3月20日 18時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんち - 攘夷がじょういになっていますが、変換ミスでしょうか…?なにかの伏線であれは申し訳ないです!! (2019年3月20日 17時) (レス) id: 4af8f25fc3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - アカツキさん» あああ!!本当ですね!ご指摘ありがとうございます!!助かりました!!直しておきます!! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 題名の【土方十四郎】の郎っていう字まちがっていますよ〜 (2017年5月9日 18時) (レス) id: 83b55b950f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年3月22日 14時