8話 ページ11
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上弦の──零…!?
聞いた事がない。そんな情報、1度も耳に入った事は無い。
然しここで焦っていても何も始まらない。
ゆっくりと自身を落ち着かせ、次の疑問を問い掛ける。
『儂の身体に、何か術を掛けただろう、あれは何の術だ。何故儂の体の傷が治っている』
A「ん?あぁ、あれか…あれは回復の血気術…あっ、大丈夫?何処も痛くない!?」
はっと気付いたかのようにわたわたとし始める目の前の少女に、自分はすっかりと毒気を抜かれていた。
『…最後に、何故、儂を助けた。儂はお前の腕を斬り落としたのだぞ』
そう、それが一番不思議だった。確かに儂は目の前の少女の腕を斬り落とし、傷を負わせた。それなのに何故───
A「人を助けるのに、理由なんて要らないよ。それに…」
少女が俯いた。ほんの少しだけ、悲しみの匂いがした。
A「…鬼は、斬られても仕方がないんでしょう?」
そう言いながら、ゆっくりと顔を上げ薄く、悲しげな笑みを浮かべた。
『…そうか。』
そう一言だけ言うと、儂は少女の頭に手を置き、優しく撫でた。
本能的に、身体が動いた。理由は分からなかったが、そうするべきだと思った。
A「 ─── ッ ? 」
少女は大きく目を見開き、此方を見た。
『今まで、辛かったな』
意図せず口から言葉が零れた。ふわりと、その小さな体を抱き寄せた。
彼女の頬をゆっくりと透明な雫が伝っていく。
腕の中の少女はその端正な顔を歪め、小さな嗚咽を漏らしながら肩を揺らした。
────────────────
A「えへへ…ちょっと取り乱しちゃったや」
目元を少し赤く腫らしながら少女は涙を拭った。
『…急に済まなかったな、妙な真似をして』
A「ううん、良いよ、すっきりしたし」
うっすらと窓から朝日が差し込む。
A「もう朝か…じゃ、僕はもう出るから」
そう言いながらゆっくりと、立ち上がる。
戸に手を掛け、外に出ようとしている。
『っ、待て、日が…』
A「大丈夫!僕は日光は平気だからね!…また、いつか逢えるなら…」
そう微笑みながら、少女は呟いた。
A「 ──血気術、《 睡蓮の香 》」
何処からともなく ふわり と花弁が舞い、睡蓮の香りだけがそこに残されていた。
『またいつか…か…』
自身もゆっくりと立ち上がり、
その いつか までは生きよう。
と、言葉を噛み締めるように呟いた。
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ゆりか(プロフ) - お話終わりなんですか?(TT) (2020年8月17日 22時) (レス) id: ce3588ab80 (このIDを非表示/違反報告)
みたゃらしちゃ(プロフ) - きのみさん» ありがとうございます!! (2019年9月16日 20時) (レス) id: 677809eb29 (このIDを非表示/違反報告)
きのみ(プロフ) - 夢主ちゃんかわゆす (2019年9月16日 20時) (レス) id: b48d9d3d8e (このIDを非表示/違反報告)
きのみ(プロフ) - シリアスものんびりもどっちも好きなので大丈夫です (2019年9月16日 15時) (レス) id: b48d9d3d8e (このIDを非表示/違反報告)
みたゃらしちゃ(プロフ) - きのみさん» ひゃぁぁもうなんか、、好きです…これからも精一杯書かせて頂きます…(´;ω;`) (2019年9月16日 13時) (レス) id: 677809eb29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みたゃらしちゃ | 作成日時:2019年9月14日 22時