9話 ページ12
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鱗「───と、ここまでが儂とAの出会いだ」
錆「そんな事が…そういえば日光が大丈夫ならなんで消えたんだ?」
『ん…そのころの鱗滝さんは鬼殺隊、鬼を倒さないなんて御法度に触れるんでしょ?僕と接して咎められるのは嫌だったし、鱗滝さんを傷付けない為には最善策かなぁ…って…』
くぁ…と小さな欠伸をしながらAは こてんと隣の義勇にもたれ掛かる。
義「 ッ!? 」
義勇は、びくっと肩を揺らしAを凝視する。
目を見開きじわじわと頬から耳までを紅く染めながらただ硬直していた。
錆「…」
その様子が気に食わなかったのか錆兎はむっとし、ぐいっと優しくAの肩を抱き寄せ
自身の膝に頭をのせた。
『…ん…』
ゆっくりと頭を撫でると、膝の上が心地良かったのかAは瞼を閉じ、すぅ…と、規則正しい呼吸をしながら眠りに落ちていった。
義「…錆兎」
錆「何だ」
義「変われ」
錆「嫌だ」
義「…変われ」
錆「嫌だ。」
鱗・真「「煩い」」
言い争いをしている二人の頭に鱗滝と真菰の拳が直撃し、その場はお開きとなった。
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『…あれ、いつの間に…』
気付くと自分は布団の上に寝かせられていた。静かに身体を起こし、周りに寝ている真菰達を起こさないよう、静かに戸を開け外に出た。
『…月が、綺麗だなぁ……って、これ二回目か…』
鱗「…あの夜も、こんな満月だったな」
声のする方へ顔を向けるとそこにはそっと鱗滝が佇んでいた。
『うん、そうだね…本当に、綺麗だった』
ひとしきりの沈黙が流れた後、不意に口を開く。
『僕はね、あの時凄く救われたんだ…こんな自分でも、生きていいんだと言われたようで…凄く、凄く嬉しかったんだ。』
月明かりに照らされながら、ひとつひとつ言葉を紡いでいく。
『さっきはさ、鱗滝さんの為だとか言ったよ、勿論本心。でもね、本当は少し違うんだ。自分の冷たい心にはあの一時が温か過ぎて、如何すれば良いかわからなくて、逃げちゃっただけなんだよ』
そんな風に言うと自嘲じみた笑みを浮かべる。
鱗「…そうか。」
鱗滝はそっとAの頭を撫でた。
『──っ 』
鱗「気にするな。」
『ッ…あはは…二回目、だね……ありがとう』
あの時言えなかった言葉を口にすると、とても心が温かくなった。
月がいつまでも二人の影を見下ろしていた。
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ゆりか(プロフ) - お話終わりなんですか?(TT) (2020年8月17日 22時) (レス) id: ce3588ab80 (このIDを非表示/違反報告)
みたゃらしちゃ(プロフ) - きのみさん» ありがとうございます!! (2019年9月16日 20時) (レス) id: 677809eb29 (このIDを非表示/違反報告)
きのみ(プロフ) - 夢主ちゃんかわゆす (2019年9月16日 20時) (レス) id: b48d9d3d8e (このIDを非表示/違反報告)
きのみ(プロフ) - シリアスものんびりもどっちも好きなので大丈夫です (2019年9月16日 15時) (レス) id: b48d9d3d8e (このIDを非表示/違反報告)
みたゃらしちゃ(プロフ) - きのみさん» ひゃぁぁもうなんか、、好きです…これからも精一杯書かせて頂きます…(´;ω;`) (2019年9月16日 13時) (レス) id: 677809eb29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みたゃらしちゃ | 作成日時:2019年9月14日 22時