☆ ページ36
その刹那、頭に激しい痛みが走る。
そして、次々と知らない人達の声が響いた。
"おひいさま、早く！"
"流れているのは同じ血だ……娘でもいい、捕まえろ！"
"此奴、まだ生きてるぞ"
"幼いが生娘だ、いくらで売れる？"
やめて、誰なの、知らない、思い出せない……
静かに、して
『うっ……』
頭の中で反響し続けるそれに耐えきれず、その場で座り込む。
頭を抑えて屈むと、すぐに兵助と仙兄が小袖を置いて走って来た。
「A！？」
「A、大丈夫か」
仙兄が肩を支え、背中をさすってくれる。
二人の呼びかけがあってなのか、響き続けていた喧騒はぴったりと止んだ。
私は体勢を立て直し、ゆっくりと立ち上がる。
『うん、平気……ありがとう、ごめんなさい』
「どうした、体調が優れないのか？」
『うんん……ちょっと、目眩がしただけ』
平気だよと笑ってみせたが、仙兄と兵助の表情は変わらない。
私はもう一度、首を大きく振る。
『ほんとになんでもないから……さ、そろそろ試着してみようかな〜』
「でも、A……」
これ以上心配させるわけにはいかない。
なるべく明るく振る舞うようにして、私は足早に試着室に入った。
『最初はこれ、次はこれ……たくさんあるなあ』
……それにしても、やっぱり凄い量の小袖だ。
お店の方に手伝ってもらいながら小袖を整理して、帯を締める。
『この帯は後ろで結ぶんですか？』
「いえ、こちら結ばずに通すだけで完成するんです。最近の小袖や着物は新しいものですとその形式でして」
『わあ、それは楽ですね』
その昔私が着ていたのは勿論全て結ぶもので、人一倍不器用だった私は覚えるのに相当苦労した。
"しょうがないなあ、教えてあげるわ"
そう言ってくれたあの子は今、何をしているんだろう。
考えなくても、分かってしまうけれど
「……A、どうだ？着れたか？」
『えっ、あ、うん！』
仙兄の声で、はっと我に返る。
急いで襟元と髪の毛を整えて、二人の前へ出た。
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海鈴(プロフ) - まみむーさん» わぁあとっても嬉しいです！！頑張ります！ (2021年6月23日 22時) (
レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 面白い作品の予感……！更新楽しみにしてます^ ^頑張ってください！ (2021年6月23日 21時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海鈴 | 作成日時：2021年6月22日 22時
