51 ページ5
『左門くんっ、逃げて!』
「そんな、無茶です!」
……無茶な事くらい、分かってる。
いくら剣道の腕があろうと、この人数に対して一人、そして相手は本物の刀。
力で勝負するなんてのは、もっての外だ。
でも、それでも、今の私が咄嗟に思いつく選択肢なんて、戦うことしかない。
この世界を何も知らない私は、戦うことでしか、左門くんを守ることは出来ないのだ。
『ふんっ』
なるべく距離を詰めないように、竹刀の長さを利用して敵を一気に薙ぎ払う。
しかし、やはり全ては避けきれなかった。
「Aさんっ」
『……っ、平気!早く!』
……右肩に、焼けるような痛み。
けれどもう、ただ、無我夢中に私は竹刀を振り続ける。
「……やはり、逃げるなんて事、僕にはできません!」
『左門くん!』
私はもう一度名前を呼んだけど、左門くんが逃げる様子はない。
むしろ、懐から苦無を出して応戦し始めてしまった。
「ふっ!」
『……すごい』
やはり忍たまであるだけあって、実に鮮やかな手つき。
これなら勝てるかも……そう思ったその時、左門くんの背後で刀を振り上げる山賊が視界に入る。
「!?」
(……危ないっ!)
『させるかぁあっ!』
_その瞬間、全てがスローモーションのように見えた。
ふわり、と宙に飛ぶ竹刀。
私は勢い良く覆い被さって、驚いたような、呆気に取られているような、そんな左門くんの表情が目に映る。
……ああ、私、山賊にも負けちゃうのかな
「ここまでだな!」
『っ、』
想定される衝撃に備えて、思わず目をぎゅっと閉じる。
けれど、私の身体を劈いたのは痛みでは無く
「……ったく、ホントあなたってバカですね」
暗闇に火花を散らすような、金属音だった。
『えっ!?』
……とても、聞き覚えのある声。
呆気に取られていれば、左門くんがあっと声を上げる。
「綾部喜八郎先輩!?」
あやべ、きはちろう?
砂が舞ったからか火が大きく燃え盛り、辺りがますます明るく照らされる。
眩しそうに目を細めたその顔は、紛れもなく、落とし穴のあの人だった。
『えっ、えっ!?なんで!』
「なんでって、こっちが聞きたいですよ……後で拷問されますからね、あなた」
「クソッ、まだ仲間がいやがった!」
一方、山賊のリーダーは刃こぼれした刀を見て、恨めしげにこちらを見つめる。
更に、上の方からまた声が響いた。
「来てるのは、喜八郎だけじゃないぞ!」
330人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (4月16日 22時) (レス) id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです。また頑張りますね! (8月28日 20時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 更新をずっとお待ちしていた作品なので本当に本当に嬉しいです…!!これからも、陰ながら応援させていただきたいです! (8月26日 8時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» お久しぶりです、コメントありがとうございます!そうなんです……。あっちはいろいろ慣れなさすぎて、一時帰国ではなく日本にずっといたい位です笑更新頑張りますね! (8月24日 1時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 更新ありがとうございます!海外留学中だったのですね……。すごいです!これからも応援しているので、作者様のペースで更新頑張ってください! (8月21日 22時) (レス) @page26 id: 5152279fe6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海鈴 | 作成日時:2022年8月13日 22時