65 ページ19
Aside
「だからこの繋がった線を元々無いものと考えてみれば……これも"桜"と"が"になるでしょう？」
『つまりこれは"湖に映る桜が美しい"ってことですね！』
「そう、有名な一節です。」
なるほどと納得しながら、私はこっそり横に座る立花さんを見上げる。
……まさか、本当に勉強を教えてもらえるなんて。
"あの、実は分からないところがあって……教えて頂けたりしませんか！"
最初はダメ元のつもりだったし、この人は喜八郎の言っていた監視だと思うし、一体どうすればと思った。
けれど、あの言葉を思い出したから＿
"そのままの、Aさんで"
喜八郎がくれた、嬉しい言葉。
……そう、私はそのままの私でいい。
何か特別なことをしなくても、変に気を張らなくても、私は私でいればきっとうまく行く。
とまあ、大した証拠も無く確信した私は思い切った選択をした。
そして現に、始めは驚いていた立花さんも呆れたのか諦めたのか、分からないところを一つずつ丁寧に教えてくれている上、その先まで見てくれている。
この人には少し怖いイメージがあったけれど、こう教えて貰っていると普通に親切な人だ。
「どうかしました？」
黙っていた私を不思議に思ったのか、立花さんが首を傾げる。
私は首を横に振った。
『あ、いや、考えごとを……ふわぁぁあ……あっ！』
「ん？」
ぽかんとする立花さん、私は思わず口を抑える。
……あ、欠伸をしてしまった！
昨日あまり眠れなかったのはあるけれど、教えて貰ってるときに欠伸をするなんて失礼すぎる。
私は恐る恐る立花さんを見上げ、頭を下げた。
『ごめんなさい！』
「いえ。少し休憩にしましょう」
でも、と言いかけ私は口を噤む。
確かにそろそろ集中が切れてしまっているし、何より立花さんも長時間付き合わせてしまっている。
どうしたものかと考え、私はあっと声をあげた。
『そしたらお茶菓子はいかがですか？沢山もらったんです』
「いや、そのような事は」
遠慮する立花さんを他所に、私はお皿にお饅頭を何個かのせて机に置く。
『教えてもらったお礼ですから！あ、毒とかは入れてないですよ！？』
一応言葉を付け足せば、立花さんは少し悩んだようにしたけれど、お饅頭に手を伸ばした。
その様子を見て一安心していると、部屋の襖の向こうから声が響く。
「失礼致します、三年の富松作兵衛という者です。天女様はいらっしゃいますでしょうか」
『とまつ、さん？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 329人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (4月16日 22時) (
レス) id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです。また頑張りますね！ (8月28日 20時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 更新をずっとお待ちしていた作品なので本当に本当に嬉しいです…！！これからも、陰ながら応援させていただきたいです！ (8月26日 8時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» お久しぶりです、コメントありがとうございます！そうなんです……。あっちはいろいろ慣れなさすぎて、一時帰国ではなく日本にずっといたい位です笑更新頑張りますね！ (8月24日 1時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 更新ありがとうございます！海外留学中だったのですね……。すごいです！これからも応援しているので、作者様のペースで更新頑張ってください！ (8月21日 22時) (レス) @page26 id: 5152279fe6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海鈴 | 作成日時：2022年8月13日 22時
