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『あの人……?』
思わず、首を傾げる。
あの人といえば、話の流れからして天女に関する人についてだろうか。
でも、一体誰なんだろう?
僅かに緊張しながら答えを待っていると、伊作さんは思案するように目を閉じて……
やがて、小さく首を横に振った。
「いいえ。やっぱり、何でもありません」
『えっ』
緊張から一転、拍子抜けした声が漏れる。
……まさかここまで言っておいて止めるの!?
心の中でそんなツッコミを入れても、伊作さんはただ、あの困ったような笑顔で笑うだけ。
「どうか気になさらず。忘れて下さい」
『は、はあ……』
本当なら知りたかったけど、なんだかただならぬ雰囲気だったし、しつこく聞いても良くない。
……この事については、これ以上考えないことにした。
一方、伊作さんはでも、と言葉を続ける。
「先程言った事は全て本当です。貴女の態度、そして考え……僕は、貴女を信じています。」
『……』
この人を、信じるべきか、否か_
本人が言った通り、これは罠かもしれない。
私を懐柔させようとしているなんてことも……無くは無いだろう。
そんなことが一瞬頭を過るけれど、私の答えはもうすでに決まっていた。
『ありがとうございます。その言葉が聞けて、嬉しいです』
「……っ、よかった」
強張っていた表情を緩め、ほっとしたように息をつく伊作さん。
……まずは、信じる。
信じてほしいなら、自分から信じてみるんだ。
『あの、良かったら、お名前を……あと、敬語も不要です』
私は勇気を振り絞り、伊作さんを真っ直ぐに見て口を開く。
私の提案に伊作さんは一瞬驚いた表情を浮かべたけれど、すぐに微笑んで、頷いてくれた。
「うん、じゃあ……改めて、僕は六年は組の善法寺伊作。えっと、君は……」
『つっ、月原Aです!』
「Aちゃん、よろしくね」
やはりまだ緊張しているのか、声が変に弾んでしまう。
差し出された手をゆっくりと握り返せば、一回り大きな手からの温もりに包まれた。
『よ、よろしくお願いします!』
「うん!……あ、そうだ」
今度は、何かを思い出したかのように声を上げる伊作さん。
どうしたんだろうと思ったその次の瞬間、私の右頬にそっと手のひらが触れた。
『わっ、』
思わず後退りしそうになって、ぎりぎりで留まる。
伊作さんは私の頬に手を当てたまま、目を伏せた。
「その、ここの……頬の傷の話なんだけど」
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時