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翌朝_
『ほんと、不思議な人だったな』
まだ朝日が届かない、薄暗い部屋の中。
少しだけ埃っぽい敷布団を畳み込んで、私は小さく息をついた。
朝になっても思い出すのは、昨日の夜に出会った"落とし穴の人"のことで……
彼の言動やあの独特の雰囲気を思い返しては、首を傾げている。
『何年生なんだろう……名前も聞けなかったし』
"実に素晴らしい落ちっぷりでしたよ"という謎理論で私を助けた彼。
どうやら侍になりきっていたところから全て見られていたらしく、特に足の踏み外し方が良かった……らしい。
彼は基本無愛想だし、何を考えているかはよく分からない感じだったけれど、悪い印象は受けなかった。
……というか、苦無を向けてきたり火薬を投げてきたりする人よりは全然ましなのでは、なんて思ってしまう。
『まあ、あの人達にもきっとそれなりの考えがあるんだろうけどね』
彼らは、きっと悪くない。
否、普通ならば許されないけれど……私は"天女"なのだから。
置かれている状況がかなり厳しい事は、自分でも分かっていた。
山本さんやおばちゃん、そしてあの彼と、私を"天女"で捉えない人は数少なく_
あくまで私は憎しみの対象、いつ殺されてもおかしくはない。
……とまあこんな風に、一度考え込んでしまえば次々とネガティブな考えが浮かんでしまう。
私は立ち上がって、首を横に振った。
『でも、怖がっていても仕方がない!現代に帰るためにも今日から動かないと』
ではまず、始めに何をするのか。
それについては既に昨日から決めていて、山本さんに必要なものを揃えて頂いていた。
"あの……男物の装束と、髪紐を頂けますか?"
"え?"
小袖を選んでいる途中に無理を言って……
流石の山本さんも、かなりびっくりしていたけれど。
『よし』
ひとつ深呼吸をして、私は枕元に置かれている男物の忍び装束に手を伸ばす。
これまで着ていた制服は全てバッグの中、ここにある華やかな小袖も袖を通す気は無い。
男装をする……これはある意味、この時代への決意表明でもあった。
元の時代の私は、帰れるその日まで大切に隠しておきたい。
『よいしょっ、と』
胸にサラシを巻きつけ、昨日の反省も生かしてきつめに装束の帯を締める。
髪はポニーテールのように高い位置で結い上げ、いわゆる"総髪"という髪型にした。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時