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『だ、誰!?』
「……」
……この学校の生徒、なんだろうか。
その人はまるで珍しいものを見に来たかのように、こちらをじっと見つめてくる。
更に、私が何度問いかけても、返事ひとつ返ってこなかった。
『あ、あの……聞こえてます?』
「……」
今度は少しだけ目を細めたその人に、絶対聞こえてるでしょと心の中で呟く。
私が天女だからと嫌がらせで無視をしているのか、それともただ単純に無愛想な人なのか_
どちらにしても、ずっと見つめられるのは落ちつかない。
さて、どうするこの状況……
そんなこんなで頭を抱えていると、突如、こちらを見ていたその人がしゃがんだ姿勢から立ち上がった。
『……?』
急にどうしたんだろう、思わず首を傾げる。
すると、その人は目にも止まらぬ速さで自ら穴の中に飛び降りてきた。
『えっ、ちょっと待っ、』
「……あなたこそ」
続く言葉を発する隙も無く、そのまま一気に距離を詰められる。
狭い穴の中、思わず後退りをすれば土の壁に背中が当たった。
『っ、』
「どこの酔っ払い侍かと思えば……天女さまじゃありませんか」
鼻先まで近づく距離、両手首は容易く掴まれて壁に押しつけられる。
振り解こうと身を捩っても、びくともしなかった。
『……なぜ、私が天女だと?』
なんとか隙を狙えないかと、真っ直ぐに茶色の瞳を見上げて問いかける。
その人……紫の忍装束の彼は、表情を変えることなく私に言い放った。
「そんなの、簡単ですよ」
『簡単?』
「ええ」
私が聞き返すと、彼は頷く。
そして、こちらに片手を伸ばした。
「あなた、着物に慣れて無いんでしょう。ほら……夜着の合わせが緩い」
『なっ、』
鎖骨にひんやりとした指先を這わされ、思わず身体が跳ねる。
……まさか、着物の着方まで観察されていたなんて。
こんなところを人に触れられるのはもちろん初めてで、思考を巡らしていた頭も真っ白になった。
「それとも……もしかしてわざと開いてるんですか?さすが、天女さま」
『っ、違う!』
もうほんとになんなんだ、この人。
護身用の苦無なら懐にあるけど……身体が固定されてしまっていて、動かない。
「おやまあ、鬼みたいに怖い顔」
『そりゃあこんなことされたら……っ、!』
……これはちょっと、まずい。
渇いた喉が、ヒュッと鳴る。
私の抵抗も虚しく、ついに首筋に顔を寄せられて_
全身の血が、沸騰するように熱くなった。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時