【wrwrd!】グラジオラス【短編集】 (ページ14)

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I won't let you go. cn ページ14

真夜中だろうが関係ない、溢れんばかりの光を放つこの場所は、いつも人々の欲望が渦巻いている

待っているのは天国か？
それとも地獄か？

どちらにせよ、一歩でも踏み出してしまえば、二度と元いた世界に帰えることはできないだろう

来る者は拒まず、去るものは許さない

カジノというのはそういうものである

「てなわけで、この勝負も俺の勝ちやな」

先程から目立っている負け知らずのこの男の名はチーノ。彼を一言で表すなら、もちろん“詐欺師"という言葉がピッタリだと思う

「そこまでにしとけ」

別に負けた相手を憐れんでいるわけではない。私達は現在任務のためにここに訪れている。あまり目立つような行動をするなと言われているのにも関わらずこの男ときたら…

「これからがええとこなんやけど…」

チーノはガタリと音をたてながら席を立ち、この場を後にした

「てかなんでAはそないな格好しとるん、普通ドレスとか着て粧し込むもんやろ」
「私を知ってそういうことを言うの？」

チーノが言うように、周囲を行き交う女性達はそれはもう、眩しいくらいに綺麗で、高そうな色とりどりのロングドレスを身にまとっている。それに比べて今の私の格好は女っ気のない真っ黒な男性用のスーツだ

「オマケにサラシまで巻いて…」
「そこまであなたに伝えてないのだけれど」

cn視点
それ以上はやめろと云う風にギロりと碧の目が俺を睨みつける

まぁ、Aは基本的に俺ら以外の人間を信用せえへん、特に貴族や男はな…彼女が男装しとるのもそういった男が寄らへんようにするため。俺としてはドレス姿のAも見たいが…まぁそれはそれで… cn視点終

「そこの殿方達、少しよろしくて？」

声がする方へ視線を向けるとそこにはこのカジノに似つかわしくないと一目見ても明らかな、年端もいかぬ娘が目を細めこちらを見つめていた。彼女の横にはお付きの者と思われる男性が二人それぞれ隣に立っていた

(こいつは確か…)
(このカジノの支配人…今回の監視対象ね、わざわざ向こうの方から出て来てくれるなんて…)
(手間が省けたな)

「ちょっと、聞いてますの？」
「あぁ失礼した、噂通りの美しさでつい…」
「ふふ、褒めても何も出なくってよ」

今まで国家の目を逃れ続け、違法カジノを経営してきたこの娘の実力は、そこらの大人よりも頭の回転が早いと思える

最悪の場合、我々が国からの使者だというのもバレているかもしれない…