Shall we dance? ut ページ1
「そこの君、宜しければ私と…」
「ごめんなさいね、先約がいるの」
これで何人目のお誘いになるだろうか…
こういうことになるのを防ぐため彼を呼んだのだけれど…
「はぁ…いつになったら来るのよ」
その肝心な彼はいつまで待ってもまったく現れる気配がない
周囲の人々を見渡せば、次々とペアが成立していくのがわかり、ペアも組まず一人で佇んでる私を、同じくパートナーを決めていない男性たちは必然的に私の方へと向かってくるのは明らかだ
(私が誘った時、あんなに嬉しそうな顔しといておいて、遅れるなんて…もう…)
きっとどこかで別の女性を引っ掛けてるのだろう。そんな考えを頭の中で巡らせてたら、何かがフツフツと沸き上がってくると同時に、キュッと胸の奥が締め付けられる
(何考えてるのかしら私…)
そもそもこれは任務の最中であり決して、遊びに来たわけではないのだ。鬱先生と踊るためにここに来ているわけではない。何一人で浮かれているのよ…
「浮かない顔してるね君」
またか…
とりあえず適当に断っておきましょうか…
「ごめんなさい、今そんな気分じゃないの、他の方を当たってくれます？」
「まぁまぁ、そんなこと言わずにそれにしても酷いなぁ、君みたいな美しいレディを待たせるなんて…」
「本当に大丈夫ですから」
「僕なら君を退屈なんかさせたりしないよ、さぁ…」
そういいながら貴族と思わしき男が私の手を掴み、強引に引き寄せようとする
面倒臭いやつに捕まってしまった…
これはまずい…このままだとこの男のペースに呑まれてしまう
「ちょ、ちょっと！離してっ！」
ダメだ全然聞いてない！
振り払うのは簡単だが、これ以上問題を起こすのはあまり宜しくない。なんで私がこんな目に…
そう思った時、何かがグイッと私を後ろへ引き寄せるような感覚に陥った
「誰だお前っ！」
後ろから漂う、嗅ぎなれたこの香りは間違いなく彼のものであった。僅かにだが香水のふんわりとした薔薇のような香りもするが、長年吸い続けた煙草の匂いはそう簡単に消せるものではないだろう
「すみません彼女は僕の連れなんで、悪いけどほか当たってくれません？」
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作者名：みすりー | 作成日時：2019年7月8日 18時
