溺れて、みずうみに (ページ42)

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『貴方が彼の人生を壊す可能性だってあるのよ。』

何をしていてもその言葉が耳にこびりついてはなれない。

確かに、浮かれていたかもしれない。

亮平と再会して、告白されて、一緒にでかけて、助けてもらって。

『彼、ジャニーズの子なんですってね。』

頭の片隅においてあった “ スキャンダル ” という言葉がど真ん中に現れる。

母に腹が立たなかったわけじゃない。

でも、母の言っていることは正しかった。

亮平とこれからも一緒にいるって言うのはそういうことで、週刊誌に載せられる可能性は十分ある。

絶対にそうならない自信なんてあるはずがなかった。

離れなきゃ。

彼の足でまといになっちゃいけない。

ごめんね、亮平。

貴方がどれだけ頑張ってくれても、私は前に進めなかったよ。

スマホに入った彼の電話番号を眺める。

大学1年生の時からずっと知ってる彼の電話番号は、消そうと思っても消せない。

もう消せないなら、せめて最後にお礼とお別れを言って、もう縁を切ろう。

そう思って、彼に電話をかける。

何度も鳴る呼出音。

彼が電話に出ないとわかって、ほっとする自分がいた。

このまま電話がかかってこないで欲しい。