溺れて、みずうみに (ページ40)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:59,326 hit

４０ページ40

目を開けると、心配そうに私の顔を見つめる兄と目が合う。

「A！よかった…」

「…おはよう。」

「おはようじゃないよ馬鹿野郎！母さんから話を聞いた時、俺はどんな気持ちだったか…！！」

「亮平は？」

「へっ、亮平？」

周りを見ても彼の姿がなく、下から彼の声も聞こえない。

亮平が運んでくれたのかな。

いや、彼はひょろひょろだから、岩本さんあたりが運んでくれたのかも。

そう思ったけど、枕元に置いてある紙を見て彼が運んでくれたのだとわかった。

〈おはよう。よく眠れた？

　これからはこうなる前に相談して！

　とりあえず、明日絶対に警察に行くこと。

　Aが思ってるほど薄情じゃないから、安心して？

　落ち着いたらまた連絡してね。

　次はお城でも行く？笑〉

丁寧な文と、久々に見る彼の文字に心が温まる。

「え？何その顔。てか亮平って誰？え、ねぇA？Aどういうこと？」

「お兄、怪我は？」

「お？うん、大丈夫だよ。もう平気。それより亮平って、」

「よかった。大好きなお兄になんかあったら私悲しいから。」

「っ、ごめん、お兄、トイレ、行ってくるなっ。」

目頭を抑えながら出ていく兄。

どうやら亮平の話を逸らすことに成功したらしい。

我が兄ながらちょろい。

「…ありがとう、亮平。」